米国防総省 イラクを内戦状態と認める
military.comによると、米国防総省ははじめて、イラクの一部の暴力が内戦であると認めました。掃討作戦で一定の成果があがったと報告された直後に、今度はイラクは部分的に内戦状態だというわけです。一体どういうことなのでしょうか?
今回発表された42ページの報告書「Measuring Stability and Security in Iraq」は年に4回公表されるもので、昨年10月〜12月は2003年以来最も暴力が激化した時期だったとしました。11月から1月までに行われた攻撃の80%はバグダッド、アンバル州、ディヤラ州、サラディン州に集中し、バグダッドでは毎日45回、他の3州では毎日70回の攻撃がありました。週あたりの攻撃の回数は平均1,000回以上で、最後の四半期の毎週ほぼ1,000回、5月〜8月間の約800回を上回りました。テロを避けてイラクを出国するイラク人は毎月9,000人に昇っています。
まだ、報告書はすべて目を通していないのですが、明らかに変な報告です。いや、報告がまともになったために、これまでの報告のおかしさが露呈したと言うべきでしょうか。私がJ-RCOMやこのサイトに書いてきた事柄を総合すると、これまで何度もイラクの治安は改善していると報告されてきたことが分かるはずです。それなのに去年の秋が最悪の状況だったということは、それ以前の報告がどこかおかしかったということになります。事実、報告が変だと言うことについて、私は繰り返し書いてきました。日本でも、まだ米軍にチャンスがあると思っている人がいるでしょうが、イラク侵攻を決意した時点でアメリカは負けたのです。戦争ははじまる前に勝敗が決していると、戦争学者は昔から主張してきました。この基本原則を最も軍事研究が進んでいるアメリカが簡単に間違えるのですから、まったく世の中は皮肉です。
なお昨日のニュースに、サドル・シティは1日に5時間くらいしか連続して電気が流れないとありました。報告書12ページの図を見ると、バグダッド付近は毎日8時間以下となっています。5時間連続して電気が流れ、残りの3時間は断続的に流れるのかも知れません。興味深いのはスンニ派の支配地域の方が通電時間が長いことです。フセイン政権時代にスンニ派の地域に電気インフラが多く建設されたためかも知れませんね。
それから、IED対策のためにアリゾナ州のユマ性能試験場で、様々なテストが行われていると別の記事に書かれています。しかし驚くことに、記事には努力していることは書かれていますが、新技術を開発したという記述がひとつもありません。ここでは当初、IEDを発見するための無人機の研究をしたといいます。確かに、その研究が始まった当初、無人機が効果的だという報道がありました。しかし、私は懐疑的でした。上空か地面に埋まっているIEDをどうやって確実に発見するのかが疑問だったのです。そして、この記事にはその研究のどれかが成功したとはまったく書かれていません。まだ有効な手だては見つかっていないのです。ある時、米軍は「最大のIED探知機は兵士自身だ」と主張しました。要するに、手だてがないので、周りをよく見ろというわけです。そして、相変わらず兵士たちはIEDで死んでいます。IEDのような単純な武器に対抗する手段がないのです。私はこれについて去年から言い続けていますが、未だに改善されていないのです。