military.comによると、海兵隊のオスプレー(Osprey)がイラクに今年9月に配備される見通しとなりました。固定翼機と回転翼機の両方の性質を持つ航空機が実戦配備されることになります。第263航空隊「サンダー・チキンズ」が、イラク西部のアル・アサド(al Asad)空軍基地に派遣される見込みです。
海兵隊では2007年にオスプレーを実戦配備したいとし、昨年部隊を編成していましたが、早速イラクで使うことになりました。海兵隊は従来使っていたヘリコプターCH−47をオスプレーに置き換えていく予定です。実験では墜落事故が起こり、開発計画が振り出しにもどったこともありましたが、ようやく日の目を見ることになりそうです。
しかし、記事には不安材料も書かれています。CH−47には両側面にそれぞれ一機、合計二機の強力な50口径機銃が付いているのに対して、オスプレーはCH−53Eと同じく50口径機銃は後部に一機しかありません。その機銃の射界が180度あるとしても、不十分ではないかと記事は指摘します。これについて、第263航空隊指揮官ポール・ロック中佐は、時速370kmの高速が攻撃から乗員を守ると説明しています。「出会った時には、すでに通り過ぎている」というわけです。確かに、オスプレーは離着陸時はローターを上に向けて垂直に移動しますが、巡航中はローターを倒して固定翼機のように飛行します。このため、速度と高度において、一般的なヘリコプターよりも高速です。
ポール・ロック中佐の言葉はリップサービスと思った方が無難です。航空機は後方からだけ攻撃を受けるのではありません。前方からの攻撃は成功率が低いとはいえ、側面から対空ミサイルを発射された場合は危険です。特に、CH−47と同じように運用するのなら、敵の間近で離着陸を行うこともあるでしょう。この時は低速で、高度も低いため、攻撃が成功する可能性はさらに高まります。CH−47なら編隊は全機が同じ方向で着陸でき、両サイドの機銃で敵を威嚇できます。しかし、CH−47はこの時に後方しか防御できません。こうした問題をどうするのかが気になるところです。どちらにしても、オスプレーを投入してもイラク情勢が変わるわけではありません。日本にとっては、沖縄でのヘリコプター墜落事故がありますから、オスプレーの事故がむしろ気になることかも知れません。