military.comによれば、 Armed Forces Journalの記事の中で、ポール・イングリング中佐(Lt. Col. Paul Yingling)が武装勢力に対する適切な準備を欠き、議会に誤った報告をしていると将軍たちを批判しました。イングリング中佐は第3装甲騎兵連隊の副連隊長で、ボスニア、湾岸戦争での経験があり、イラクにも2回派遣されています。
早い話、佐官が将官を批判したわけで、いわゆる「下からの突き上げ」というものです。イングリング中佐は、米議会は軍の昇進制度を見直し、より適切な人物が将官になるようにすべきだとも主張しました。
この記事を読んで、太平洋戦争が終わったあとで、井上成美海軍大将がかつての上官たちの前で「先輩たちが陸軍に引っ張られて戦争を回避しなかったのは情けない」と批判したという話を思い出しました。軍人は戦うためだけに存在するのではなく、政治が判断を誤ろうとしている時はそれを止める役割があります。しかし、実際にはボスが言い出したことには反対しにくいもので、内心はまずいと思いながらも消極的賛成の立場を取ってしまうものです。
私もイラク侵攻の話を聞いた時は軍が反対してくれることを期待しました。実際、何人かの高官は侵攻に疑問を示したものの、反対し切れませんでした。政権内部にいたコリン・パウエルは反対を強く進言しましたが、イラクに大量破壊兵器があるという宣伝の象徴的立場を演じさせられ、職を辞する結果となりました。政権内で最も軍事に精通しているコンドリーザ・ライスは調整役を演じるだけで、自らリーダーシップを取ろうとしません。いまのブッシュ政権には、イラク政策に反対する人は誰もいません。こうした状況が軍人たちを不安にさせ、今回のような発言が出てくる理由になったのでしょう。この記事を読んで、将官たちが積極的な役割を演じようとするのかに注目しなければなりません。