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歴史街道

米軍の同性愛禁止について

2007.5.26



 24日に書いた記事について、「本当に米軍は同性愛が禁止なのか」と知人から尋ねられたので、これについて書きます。

 原則的に米軍は同性愛を禁じています。かつては入隊のときに確認しており、入隊後も発覚すると除隊させられました。さらに米軍の軍規、統一軍機法典では同性愛者同士がセックスをすることを禁じています。名前は忘れましたが、あるロック歌手はどうしても軍隊を辞めたくて一計を案じ、軍医に「同僚を愛してしまった」と嘘の告白をして、まんまと除隊を実現したというほどです。しかし、クリントン政権下の1993年、「言わない、聞かない」政策が実施され、同性愛者の兵士はそれを公言してはならず、軍も兵士に問い質してはならないとされました。発覚すると除隊になることは変わっていませんが、そうでない限り問題にはされなくなったのです。実際、同僚に同性愛者がいることを知っている兵士が23%いることが分かっています。

 今年に入ってから、対テロ戦のための人材確保のために、同性愛者の入隊を認める方向で軍は動き始めています。毎日新聞によると、2001年に除隊処分を受けた兵士は1,273人ですが、2006年には612人と減っています。これはテロ戦争用の人材確保のために同性愛者の在籍を黙認しているためといわれています。

 また、以前から同性愛差別に対する批判があって、映画「ブロークバック・マウンテン」のような作品がアカデミー賞を受賞するなど、同性愛者の地位向上が徐々に進みつつあるというのが現状です。しかし、同性愛者だと分かったために同僚に殺されたり、嫌がらせを受けたりしている人たちがいるのが現実で、正式には同性愛は禁じられたままです。だから、現代は明確な規定のないグレーの時代だといえます。こうした歴史的経緯をふまえないと問題は分かりません。軍法だけ見ても全体像は分からないのです。

 私の考えでは、同性愛を禁じた軍規は、同性愛が異常とみなされていた時代の倫理観に基づいており、歴史的な役割は終えました。しかし、キリスト教では世の中には男と女しかおらず、その中間はあり得ません。そう考えないとアダムとイブの話が崩壊してしまいます。だから、軍隊はキリスト教的価値観に合致しないセックスは全部認めたくないのです。現実には性別は男女だけでないことが分かっており、そうした人たちも幸せになる権利があると考えれば、同性愛を理由に差別することはできないと考えるしかないと私は考えます。同性愛は同性に恋愛感情を抱くことで、直ちにセックスと結びつくとは限りません。精神的なつながりを求める場合もあることを考えると、米軍の軍規は見直されるべきだと考えます。

 日本では同性愛の問題自体が語られることが少ないため、自衛隊には何の規定もありません。これは自由を意味するよりも無関心を意味すると解釈すべきだと思います。

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