onlineで定期購読の申し込み!

総合的国際情報誌
フォーサイト

歴史ファンなら…
歴史街道

MRAPがイラクに少数しかない理由

2007.5.31



 global securityのデータを見ると、昨日の段階で今月の米軍戦死者は102人で前月と同じになりました。他にもまだリストに載っていない若干数があると考えられるので、今月は前月を上回る戦死者になる見込みです。さて、クリスチャン・サイエンス・モニターに、IED攻撃で一度も死者を出したことがないMRAPについての記事が載りました。

 死者が出ないと言っても、負傷者は出ているのでしょうが、米軍にとってMRAPは重要です。しかし、イラクには約350台のMRAPしか装備されていません。その理由はMRAPを製造するフォース・プロテクション社が大量生産ができないためだといいます。1年前、11人の組み立て工が1ヶ月かけて1台を製造していました。国防総省は21,000台のMRAPを要求し、議会は7,700台の予算を承認しています。現在、フォース・プロテクション社は月産100台にまで生産力を増大しており、200台まで増やしたいとしています。また、8社がMRAPの契約で競争中とのことです。

 MRAPは徐々に配備されていくようですが、記事は千台以上のMRAPが来年以降配備されていくことについて、同じ頃に米軍の多くが撤退すると信じられていることについて、疑問を呈しています。いま、ホワイトハウスではイラクの兵力削減が議論されていると言います。その現実性は議論の余地がありますが、この見解はそれを前提としています。確かに、このことは大きな皮肉ですね。前にも書きましたが、MRAPによってイラクの治安が改善するわけではありません。軍隊の仕事は、敵を見つけて攻撃することです。姿を容易に見せない敵に対して成果をあげるのは難しいのです。イラク侵攻以降、状況を改善するために開発中の武器が投入されてきましたが、いずれも決定打とはなりませんでした。MRAPはそれらの中で最良ですが、それでも効果は薄いでしょう。死者が出なくても武装勢力はIED攻撃を止めないからです。アメリカの目的はいつまで経っても達成できません。

onlineで定期購読の申し込み!

ニューズウィーク日本版
航空自衛隊なら
Jウイング

代表的ニュース週刊誌
Time(英語版)

陸戦用車両なら
PANZER

ニューズウィーク日本版
海上自衛隊なら
Jシップス
Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.