military.comによると、米陸軍で脱走や無許可離隊(AWOL)が増えています。
2004年に2,450件だった脱走者が2006年には3,301件へと、35%も増加しました。AWOL(24時間から30日間までの無許可離隊)になると数万件に昇ります。記事には双子の兄弟とその弟の3人が同時にAWOLを行った事例が書かれています。これに比べると、同じ時期の海軍、海兵隊、空軍の脱走者は減少し、AWOLは2004年に5,259件だったのが、2006年には5,361件と少しだけ上昇しました。記事には「彼らは地上で戦う者たちだ」として、陸軍の数字の上昇を理解できるという退役准将の言葉が引用されています。
ここに書いたようにAWOLは30日を越えて離隊すると起訴されるので、一般的にも脱走罪は30日間を越えて軍を離れることだと思われていますが、統一軍規法典には30日間という期日は一切書かれていません。脱走罪とAWOLを隔てるのは、「二度と軍に戻らない」という決意です。帰隊の意志があって離隊した場合はAWOL、その意志がない場合は脱走罪ということです。だから、何十年も離隊していても帰隊する意志があるのなら脱走罪にはならず、AWOLの扱いになります。チャールズ・ジェンキンス氏のように北朝鮮に亡命して、長期間戻らなかった場合でも、理屈の上ではAWOLの申し立てはできます。ただし、30日間を越えて部隊を離れると、軍は当事者に帰隊する意志がないと仮定し、起訴の手続きを開始できます。そうしないと、長期間離隊した者を放置することになります。起訴されたことを知って軍に出頭し、改めて帰隊の意志がないことを表明する軍人もいます。
日本でも国会が決める法律だけにすべての規則が書かれる訳ではなく、事情により変更すべき部分は地方自治体が定める条例などで補足されるものです。統一軍規法典は全米軍の軍規であり、各軍にはまた別の軍規があります。さらに、それぞれの法には運用上の常識というものもあります。だから、軍法を考える上では判例なども含めて法律環境の全体を見ないと正確に判断できないというわけです。