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歴史街道

トルコはイラク北部に侵入したか?

2007.6.7



 日本でも報じられていますが、数千人といわれるトルコ軍がイラク北部に侵入したとのことです。最近、トルコとクルド人の間はテロ事件によって悪化し、トルコは自衛のために侵攻もあり得ると明言していました。military.comによると、匿名を条件に語った複数のトルコ政府高官によれば、この侵入は緊急越境追跡(hot pursuit)であるということです。また、トルコ軍の侵入は6日午前早くに始まり、同日の午後遅くまで続き、侵入した距離は2マイル以下ということです。

 しかし、トルコの外務大臣アブデュラ・グルもトルコ軍当局者もこの侵入を否定しています。トルコ軍はイラクの領域外で小規模な活動を行っているが、一度に数千人も動かすことはないというのです。ホワイトハウスの報道官もイラク北部に新しい活動はないと言い、バグダッドの米軍報道官もトルコ軍の侵入は確認されていないとしています。イラクのホーシュヤール・ズィーバーリー外務大臣も侵入を否定しました。

 証言したトルコ高官によると、トルコ軍が侵入をトルコ政府に要請したものの、トルコ政府は却下したということです。とすれば、トルコ政府は公式には認めないものの、イラクへの侵入を黙認したのかも知れません。こうした事例は過去にもあったと記事は書いています。そして、こうした出来事は悪材料につながるため、イラクとアメリカは口を揃えて否定しているのかも知れません。

 確かに、この報道には疑問もあります。「緊急越境追跡」は、普通ならEU内部の警察官が犯罪者を追跡するために国境を越えることを指す用語で、1985年のシェンゲン協定で確立されたものです。トルコはこの協定に参加していないはずで、警察官ではない軍人が数千人が越境することに適用できるとも思えません。当然、これは関係が良好の国家間でだけ成立することで、イラクとトルコのように問題を抱えた国の間に起こる話ではありません。

 偽情報は軍事目的だけでなく、経済目的のためにも流布されることがあります。石油の価格を短期間だけ動かしたい時には、中東諸国の要人が死んだというニュースが流されたりします。この事件の真相はまだ謎のままです。

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