military.comがイラクから徹底することの困難さを報じました。イラク北部で最高位のベンジャミン・R・ ミクソン少将は、イラク北部の兵力(5〜6個旅団、17,500〜21,000人)を半分に削減するのには最大で18ヶ月かかり、撤退期間はテロ攻撃の規模に依存し、激しい戦闘が続いているならより困難で長期間になるかも知れないと述べました。
ロバート・ゲーツ国防長官は撤退に関する質問に、港と空港が自由に使えた湾岸戦争でも兵士と装備を帰還させるのに1年間かかったことをあげ、米軍だけでなく、民間軍事企業の莫大な装備品とその他の事柄も含まれるのだと述べました。図らずも彼は、民間軍事企業が戦争に深く食い込んでいることを証明しました。撤退に関しても軍のことだけを考えるわけにはいかないというのですから。
さらに暗いニュースですが、統合参謀本部議長ピーター・ペース大将が3月に10個大隊あった独立して行動できるイラク軍が現在は6個大隊に減ったと述べました。ペース大将は、戦闘による人的・物的損耗なので、「過度に心配」する必要はないと言います。なお、ペース大将によれば、米軍は6,000人の兵士をイラク軍の訓練に割り当てています。本当に戦闘だけによる損耗なのかは疑問です。これまでイラク軍の進展が後退したのは、武器の横流しなどが原因でした。今回はそれは問題にならない程度で、戦闘による損耗がほとんどだと言えるのかは疑問です。icasualties.orgのデータはイラク軍とイラクの民間人の総計で、その内訳は分からないものの、今年3月の死者数は2,977人で、以降月別は順に1,821人、1,980人、1,345人と下降気味でした。
記事には要人たちの意見が他にも載っていますが、要するに米軍(と民間軍事企業)は戦略的な考察の下に撤退するものの、それはイラクでのテロ攻撃の程度により時間的な要素と難易度が変化するということです。当たり前の理屈を述べているだけで、ちょっと物足りない気がします。軍高官から長い間、独創的な策を聞かされたことがありません。湾岸戦争の時に比べると、随分と高官たちの質が変わった印象があります。
この記事を読んで、米軍が撤退する日はかなり遠いという印象を受けました。イラク軍が自立する見通しが立たない以上、ブッシュ政権は撤退を言い出せません。イランとの話がまとまる見通しも疑問ですし、その上でもシリアから入国するサウジアラビア出身のジハード戦士という問題があります。多くの戦争で、講和のタイミングを見計らう内に犠牲者が増えるという問題が起きています。太平洋戦争がそうですし、ベトナム戦争でも同様のことが起こりました。今、私たちがイラクで見ているのは、まさにこれです。