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イラクの米空軍力が強化される

2007.7.16



 イラクにおける米空軍が強化されたという記事がmilitary.comに載りました。

 航空偵察用の装備は昨年の2倍になり、B1-B爆撃機もディエゴガルシアからペルシャ湾の某基地に再配置されました。2007年の前半6ヶ月に、米空軍と米海兵隊の航空機は爆弾とミサイルを437回投下しました。この数字は2006年の前半6ヶ月の5倍、後半6ヶ月の3倍です。バグダッドの北50マイルにある航空管制センター「キングピン」は今年140,000トンの貨物を扱います。これは2006年の取扱数よりも、その3分の1以上の増加です。イラク西部のアル・アサド空軍基地(Al-Asad)にはA-10攻撃機が1ダース以上、バラド空軍基地にはF-16C飛行隊1個が配備されました。他にも色々書いてありますが、バラド基地の11,000フィート(3,352.8km)の滑走路が5〜7年の酷使に耐えられるように強化されたことが気になります。実際に5年以上駐留するかどうかは別にして、政治的決断がなされてからでは準備が間に合わないものは、軍は前倒しで作っておくのです。米軍がイラク軍が使っていた空軍基地を使っているだけというイメージはすでに当てはまらない状況になっています。米軍は管制センターを作って常時100機以上が飛んでいるイラク空域を管理し、滑走路を整備しています。

 空軍・海軍航空戦力の充実振りとは反対に、2006年以降のイラクの治安は悪化し、死傷する兵士や民間人は増加しています。この戦いに空軍は決定的な役割を果たせないのです。敵に空軍はなく、航空戦力は地上軍の支援しかできません。敵は常時終結しておらず、場所が分かった拠点を攻撃することはできても、それは決定的な勝利にはつながりません。地上軍にとって、要請したとおりに空爆が行われることは強い安心感になりますが、それで武装勢力を弱体化することは不可能です。この記事は状況の改善ではなく、悪化を示しています。イランにとっては、イラク国内にアメリカの空軍基地が増えたのと同じです。マリキ首相はイラク軍は治安を維持できると主張していますが、ごく最近も米軍兵士とイラク警察の警察官が銃撃戦を行った事例があります。航空戦力を強化しても、地上が混乱しているのだから、その効果は半減というところです。

 パキスタンでモスク籠城事件の政府の対応に反発したテロ攻撃が多発しています。ムシャラフ大統領は一端はまとまった交渉を反古にして突入策をとったといいます。今回の事件はパキスタン国内でのイスラム主義運動の転回点となり、パキスタンを不安定にするはずです。ムシャラフ大統領の強攻策はテロ活動に大義名分を与えたのです。これまで活動に迷いを感じていた人たちを、一気に支持派に変えるほどの出来事でした。アルカイダはそうした狭間に入り込み、勢力を拡大しようとするはずです。インドでもアルカイダの活動が強化されれば、それは東アジアへと拡大していくでしょう。日本国内でのテロはほとんど可能性はないものの、アジア各地の日本企業・団体が狙われる危険性が高まります。すべては「テロの拡散」の方向に進んでいます。忘れてはならないのは、地球上にはまだテロを生む土壌があるということです。それと対決するのではなく、テロの原因を政治的な手法でつぶしていくことの方が大事です。過去の歴史を見れば、そうした政策が試されたことはなく、また賢明であることは明らかです。

 本来、そうした議論をして、実行に移していくことが大事なのですが、アメリカの議論はイラク撤退だけに集中しています。現在のところ、テロ全体を減らしていく政策を模索する国はどこにもありません。その盲点が将来、「テロの時代」を呼ぶ危険性を危惧します。

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