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軍事的な見識を欠く塩崎・小池発言

2007.8.10



 塩崎官房長官が9日午前の記者会見で「9・11のテロでは日本人24名が亡くなった。テロとの戦いは日本を含む世界全体が連帯して取り組まなければならない課題だ。米国が始めた勝手な戦争では全くない」と述べたという報道がありました。

 こうした発言しかできないから、自民党の国防政策は駄目だと言いたくなります。

 まず、24名の日本人がテロで死亡したことをあげたことが誤りです。こうした発言は報復戦争という誤ったメッセージを伝えかねません。戦争を倫理的な視点で考えることは間違いを誘発する場合があり慎むべきです。現に、アメリカは復讐心で現在の誤ったテロ戦争の道を選択しています。どんなに「許せない」と感じても、国家戦略は冷静な判断の上に組み立てられるべきです。

 「テロは世界全体の問題」だという割には、アメリカをなだめる程度の協力しかせず、非軍事部門では何も行動を起こしていません。この台詞が建前だということは誰の目にも明らかです。日本政府はアメリカの機嫌を損なうことしか考えていません。米政府の支持が得られれば与党は長期政権が望め、日本の政情が安定するというのが本音です。日本国民がテロに遭う危険をできるだけ小さくするための政策ではないことは、誰の目にも明らかです。日本では、海外で日本人がテロに遭うことよりも、政権が不安定になる方がより責任を追及されることになり、与党はそれを避けたいと考えているのです。

 また、イラク侵攻が戦略的誤りだということは、当初から専門家たちから指摘され続けていることで、そんな戦争をはじめたことはアメリカの勝手な行動と断じて構わないことです。

 現在のテロ問題は、塩崎官房長官が述べたような軽いものではありません。しかし、日本政府はテロ問題を研究するために特別に予算を設けるわけでもなく、新戦略を創造することもなく、アメリカの要求に応えようとするだけです。最初に対米追随という結論ありきの判断でしかありません。安倍晋三総理は岸信介の孫、佐藤栄作の甥であり、対米追随で長期政権を維持した一族の出身です。彼が言う「美しい日本」がどういうものかは、彼のプロフィールを見れば明らかです。岸総理の前任だった石山湛山のように、戦前に植民地の放棄を主張して日本政府に睨まれ、戦後には公然とGHQに反論して公職追放の処分を受けた骨のある政治家は、今の与党には見当たりません。

 いまは冷戦時代の敵同士が共同演習をする時代です。一方で、イスラムの過激主義者たちが勃興しており、これらが将来の敵味方を形成しつつあると見るべきです。いま、アメリカだけを支持すれば、将来テロ戦争が巨大化した時に必ず困ったことになります。アメリカとは距離を置き、テロ問題を包括的に捉え、対応を検討する部署を設置すべきです。イラク侵攻に協力したことで失った中東での信頼を回復するための努力を行い、少しでもテロリストが生まれる原因を取り除く努力も必要です。そのためには非軍事的な分野での活動が大事です。政府の見解をアラビア語に翻訳してホームページで発信することも重要でしょう。

 小池百合子防衛大臣が小沢一郎氏を「時計が止まっている」と批判したのも同様です。軍事はこのようなちょっと気が利いた程度の言葉で語れるものではありません。安全保障問題では理解しがたい発言が多い小沢氏を擁護する気はありませんが、軍事的な見識に乏しい者が防衛省のトップに座っているのは不安材料にしかなりません。

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