military.comによれば、昨年、米陸軍の自殺者は過去26年間で最も高い率でした。2006年に自殺した現役兵士の人数99人は、前年の88人を越え、1991年(湾岸戦争中)の102人以来の最高値でした。
過去26年間で米陸軍の自殺率は、最高が昨年の10万人あたり17.3人で、最低は2001年の10万人あたり9.1人でした。平均は10万人あたり12.3人です。イラクとアフガニスタンに派遣された女性兵士は、そうでない女性兵士に比べて2倍多く自殺しています。
自殺の原因は、個人的な人間関係での失敗、法律や経済的な問題、仕事のストレスと考えられています。さらに、イラクとアフガニスタン、戦争の準備に参加している国へ派遣されている日数が多いほど自殺する者が増えます。自殺者の4分の1は過去に一つ以上の精神障害を抱えていました。それらの20%が双極性障害(躁鬱病)か鬱病で、8%は心的外傷後ストレス障害でした。最も一般的な自殺の方法は銃器で自分を撃つことです。自殺未遂では、薬物の過剰摂取や自傷行為が多い傾向があります。
調べてみると、最近の調査で自殺率が世界で最も高いのはリトアニアの10万人あたり44.7人(2002年)です。日本は10万人あたり24.1人(2000年)で第10位です。2006年の米軍の自殺率に近いのはフランスの10万人あたり17.5人(1999年)です。アメリカの自殺率は10万人あたり10.4人(2000年)で第46位ですから、10万人あたり17.3人という数字は極めて高いことになります。
軍人は職業別で最も自殺率が高いといわれ、こうした数字が出るのはさほど不思議なことではありません。戦争に携わる期間が長いほど自殺率が増えていくのも従来言われているとおりです。現に、イラクに派遣された陸上自衛官の自殺率は他の自衛官に比べて高いことが知られています。2004年1月〜2006年3月までにイラクに派遣された自衛官は陸自が5,000人、空自が1,600人で、その中から陸自で4人、空自で1人の自殺者が出ています。これを10万人あたりに換算すると、陸自が60.6人、空自が15.2人、両方では37.9人という驚異的な数字になります。もっともこの数字は米軍の99人に比べて実例が少ないために、精度の点では問題があることを忘れてはなりません。しかし、こうした自衛官の自殺は日本ではほとんど問題視されていません。イラクでの自衛隊の活動を絶賛する人たちが、自衛官の自殺が増えたことを憂慮しているという話は耳にしたことがないのは偶然ではないのかも知れません。私がかつて怪我で入院した際、大部屋の半数が陸自隊員だったことがあります。その際、同僚を見舞いに来た陸自隊員が「○○がいなくなったので探したら、○○湖の近くで首を吊っていた」という話をしたのが聞こえて驚いたことがあります。また、基地の怪談話の中で「自殺した隊員の顔が3階の窓ガラスに浮かんだのを目撃した」という話も聞きました。こうした問題は多くはストレスとの関係で説明がつけられます。これは戦争を考える上で常に忘れるべきではないことです。