military.comによれば、クルド人の指導者マスード・バザーニ(Massoud Barzani)は、イラク政府が憲法第140条を実行しないなら「本物の内戦」になると警告しました。
イラク憲法は、年末までにクルド人にキルクークの自治権を任せる国民投票を行うことを求めていますが、イラク政府は国民投票を遅らせています。この問題が解決されなければ、あらゆる方法をとるとバザーニは述べました。投票を行う前に人口調査が行われる必要があります。2003年にサダム・フセインによって追放されていたクルド人がキルクークへ戻ってきましたが、人口調査は行われていません。人口調査なしに、選挙が行えないのは当然です。クルド人はキルクークを放棄したり取引したりせず、憲法と法律によって取り戻そうと考えていますが、それができないのなら「本物の内戦」になると言うのです。バザーニは問題の解決を某国が妨害しているとも主張しました。某国とは言うまでもなくトルコのことです。
早い話がテロ宣言なのでしょうが、バザーニはイラン、シリア、トルコが憂慮する暴力の行使を否定しました。つまり、イラクに対してだけ実力行使するということでしょう。近代法が認めている基本的な権利のためという大義名分があるので、この問題は余計に厄介です。当初から危惧されていたことが、そろそろ具体化しつつあるというところでしょうか。別の記事には、7月の米軍の戦死者が過去8ヶ月で最低だったと書かれていますが、何の意味もありません。ワシントン・ポストは過去2年、米軍の死者は7月に減少し、8月に上昇したと報じています。クルド人が暴れ出したら、この倍の犠牲を覚悟しなければならないでしょう。ワシントン・ポストの同じ記事が、スンニ派の議会最大勢力が5〜6人の閣僚を引き揚げると証明したことを報じています。シーア派中心の政府は、イラクのためになるどんな有意義な改革をも拒否してしまうためということです。スンニ派とシーア派の対立も高まっています。これでどうやってイラクの治安を安定させるというのでしょうか。日本政府の公式見解では、イラクの復興支援は徐々に進展しており、日本はそれに協力していくという立場です。状況がどんどん変化しているのに、日本政府の見解はまったく変わっていません。最初に「対米協力」という結論ありきなので、見解を変える必要はないのでしょう。