ブッシュ大統領が日本とテロリストを同一視
ブッシュ大統領が「ボート・ピープル」「再教育キャンプ」と「キリング・フィールド」といった言葉を用いたという演説の全文が
ワシントン・ポストに掲載されました。その中で、対テロ戦争の意義を説明するために、アメリカが日本の軍国主義を民主主義へ転換したことを上げました。長い演説なので要点だけ示します。
アメリカを日本が敗北を民主主義に転じるのを援助させた理想と関心は、我々をアフガニスタンとイラクで戦い続けさせているのと同じです。
簡単にいえば、日本はかつてはアルカイダや武装勢力と同じであったけども、アメリカが戦争に勝って民主主義を持ち込んだから、いまは同盟国になったということです。実例として、日本の副総理が「女性に参政権を与えることは日本の政治の進歩を遅らせる」と発言したこと、マッカーサー元帥が自叙伝に「女性への参政権を与えることに大きな批判があった」と書いていることをあげています。
ちなみに、フランスで女性に参政権を認めたのは、日本で女性に参政権が認められたのと同じ年です。日本は選挙権のある女性は20歳以上と定めましたが、フランスでは21歳以上でした。フランスはアメリカの味方だったはずですが、日本よりも民主化は遅れていたわけです。大正デモクラシーが後退したのは、軍国主義のためと言うよりは、共産主義や社会主義の勃興によるもので、軍国主義の発達はその後だといわれます。ブッシュ大統領が述べた事柄は通俗的な歴史観に過ぎず、「戦後アジア諸国が独立できたのは大東亜戦争のお陰」と主張するのと大差ありません。大統領は朝鮮戦争とベトナム戦争も引き合いに出しましたが、ベトナムが抗議の声をあげたことが報じられています。
退役軍人会での挨拶だから、彼らが参加した戦争をテーマにするのは仕方がないとしても、演説の中身は「欲しがりません、勝つまでは」と言っているだけに過ぎません。
ワシントン・ポストの別の記事によれば、ホワイトハウスは9月中旬にデイビッド・ペトラエス大将とライアン・クロッカー大使が報告を行った後も、イラクの兵力レベルを現在と同じに維持することを望んでいます。これはある高官の見解ですが、別の高官は兵数を130,000人規模に縮小することを望んでいます。いずれにせよ、来年の4月までには増派した部隊は撤退させる必要がありますが、ブッシュ大統領は増派を続ける方を選ぶ気がします。テロとの戦いを諦めるような選択は、彼にとっては敗北主義に他ならないのです。