military.comによれば、鯨や海生哺乳類に損害を及ぼすことを理由に、連邦判事が南カリフォルニア海岸沖で米海軍が高出力ソナーを使うことを禁じました。
フローレンス - マリー・クーパー連邦地方裁判所判事は、天然資源保護協会(Natural Resources Defense Council: NRDC)の訴えを認め、鯨を海岸に導く恐れがある中周波音ソナーの使用を禁じました。ソナーには2種類あり、音を収集するだけのパッシブ・ソナーと、探査音を発射して反響音を調べるアクティブ・ソナーがあります。今回禁止されたのはアクティブ・ソアーで、探査音が鯨などの海洋生物の感覚を狂わせ、海岸で座礁する事故を引き起こしているといわれてきました。今回、それが法律によって確定したのです。海軍は控訴する予定ですが、禁止令の効力は裁判が終わるまで有効です。
こうした動きが起こるのはアメリカらしいと感じます。今回禁止されたのは中周波音です。従来鯨に悪影響があるとされていたのは低周波音だと聞いていました。この変化の理由はよく分かりません。ソナー音の鯨への影響はまだ原因がよく分かっていないといいます。しかし、調査が難しい海洋生物の異常行動を解明されるまで待てないという判断が優先されたのでしょう。座礁事故だけでなく、ソナー音は声で仲間と連絡を取り合う鯨の行動を狂わせる危険性も指摘されていると聞きます。皮肉にも、鯨の最も近くにいるのは潜水艦なので、アメリカでは鯨の生態調査に原潜を使うというアイデアも出ているそうです。
米海軍も面倒な問題に引き込まれたものです。アメリカでは魚を哺乳類とみなし、自分たちと同類の動物という認識が定着しています。そうした文化を土壌とする国の軍が鯨に悪影響を与えているとなれば世論の批判は避けられません。海軍も無下にはできないでしょう。これを機会に海軍が予算を出して、ソナー音と鯨の事故の関係を調査したらどうかと思います。