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狙撃兵が囮を使って民間人を狙撃か

2007.9.26



 military.comによると、イラクで活動している米軍の狙撃兵が、起爆コードのような罠を仕掛け、それを拾い上げようとした者を狙撃して、IEDを設置しようとしていた武装勢力を殺害したと見せかけ、実績作りをしていた疑いが浮上しています。

 容疑者エヴァン・ヴェラ軍曹(Sgt. Evan Vela)の弁護士は「依頼人は上官の命令に従っただけだ」と主張しています。弁護士とヴェラ軍曹の父親は、罠に近づいた者を誰でも殺す秘密のプログラムがあると主張しますが、米陸軍はイラク人を殺害するプログラムの存在を否定し、狙撃のために武器を置くことは合法であると主張しました。3人の狙撃兵が告発され、その内の2人の審尋で、このプログラムの存在が示されましたが、詳細は明らかになっていません。ワシントン・ポストによると、レンジャー狙撃偵察小隊指揮官マシュー・P・ディディエー大尉は宣誓陳述で、囮プログラムを証言しました。ディディエー大尉は、まず囮のアイテムを置いて、それを監視し、誰かがそれを拾い上げて、持ち去ろうとしたら、その者がそれを米軍を攻撃するため使う証拠とみなして攻撃するのだといいます。ワシントン・ポストは、これは不正規戦闘グループによって考案された戦術だといいます。ヴェラ軍曹とマイケル・ヘンズレイ二等軍曹(Staff Sgt. Michael Hensley)は、最高刑が死刑の計画的殺人に問われています。もうひとり、ジョージ・サンドバル・Jr技術兵(Spec. Jorge Sandoval Jr.)の裁判は水曜日にバグダッドで始まります。

 いよいよ米軍のスキャンダルが暴露される時期が来た感じです。おそらく、この事件の真相は、陸軍が囮を使った狙撃を命じ、狙撃兵が誤って一般人を殺害してしまい、罪に問われたのでしょう。アブグレイブ刑務所の虐待事件と同様に、兵士はそれが違法行為だと知らずに任務に励み、結果として起訴されたという話です。こうした場合、兵士の家族は納得がいきません。「息子は国のために戦ったのに牢に入れるのか」という話になるからです。狙撃した相手が武装勢力であれば、これは正当な戦術になりますが、民間人だと途端に殺人事件になります。問題は、狙撃兵は標的をスコープを通じて見ているだけで、武装勢力だと断定できるわけではないということです。外観と行動から、武装勢力だろうと判断して引き金を引いているだけです。記事には殺害された人について、詳しいことは書かれていません。審尋で証拠として公開されなかったのかも知れません。

 こんな事件が起こるのも道理です。狙撃は標的が来ないと成績を上げられないので、何か仕掛けを使おうということになります。狩猟が盛んなアメリカでは、鹿が好む臭いがする物質や、発情期の鹿の泣き声を出す笛、実物大の鹿の模型など、様々な囮が通信販売で売られています。標的を惹きつけるアイテムを使う手法を発案するのは、ごく自然なことなのです。一般にいわれているのと違い、狙撃は想定した距離の中でなら、訓練を積んだ者には難しくありません。それよりも、射程内に標的をおびき寄せる方が難しいのです。だから、こうした囮を考えつくわけです。今回の問題が起きるまで、誰も問題になるとは思っていなかったのでしょう。

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