ワシントン・ポストが、9月16日に起きたブラックウォーター社によるイラク人への発砲事件に関するアメリカ大使館の初期報告の内容を報じました。報告書は2ページのごく簡単な内容ですが、BW社寄りの内容になっています。
3つのBW社の警護チームがイラク政府高官をイズジハル金融施設(Izdihar financial compound)に移動させようとした時、入り口の25ヤード外側で自動車爆弾が爆発しました。2つの警護チームは高官と共にグリーン・ゾーンへ戻りました。もう1つのチームは周辺の複数の場所から8〜10人の敵から銃撃を受けました。敵は民間人の服装をしていたり、警察官の制服を着ていました。
ある政府高官は、警備員の中に「射撃を止めろ」と絶叫して、同僚の銃撃を止めさせようとしていた者がいることから、警護チームが指揮統制が取れない状態にあったと証言しました。
イラク内務省の報告は、これとはかなり違っています。警護チームは自動車の流れを止めようとして、停車に失敗した白い自動車に発砲して、搭乗者を死亡させ、車両を炎上させました。人々が逃げようとすると、警護チームは周囲に向けて発砲しました。現場にいた交通警官は、発砲した警察官はおらず、警護チームだけが発砲していたと証言しました。自動車を攻撃するためにロケットランチャーか擲弾筒発射装置が使われました。2機のヘリコプターが上空にいて、警護チームを支援していました。15分後、警護チームは煙幕をはって立ち去りました。
アメリカとイラクの合同捜査の報告書も記事に掲載されています。
午前11時53分、入り口の25ヤード外側で自動車爆弾が爆発しました。この時、高官をチーム4(1チームは普通、ライフル銃と拳銃で武装した警備員多数に、3〜4台の装甲車から成る)が警護していました。戦術支援チームTST 22が高官を脱出させるのを支援する位置に派遣されました。チーム4とTST 22は無事に高官をグリーン・ゾーンへ移動させました。TST 23がグリーン・ゾーンから現場へ派遣され、現場に着くと彼らは周囲の複数の場所から銃撃を受けました。TST 23は反撃し、現場から退却しようとしましたが、装甲車ベアキャットが故障しました。TST 22はTST 23を支援するために、グリーン・ゾーンから戻るように命じられました。TST 22が現場に戻る前に、TST 23はベアキャットを牽引してグリーン・ゾーンに戻りました。現場に戻ったTST 22はイラク軍の即応部隊に遭遇し、イラク陸軍と警察部隊の車両に取り囲まれました。イラク人は大口径機銃をTST 22に向けました。TST 22は米大使館の地域的安全保障オフィスの戦術作戦センターに連絡を取りました。地域的安全保障オフィスはBW社のヘリコプター「リトルバード」を現場上空に派遣しました。12時39分、米軍の即応部隊が到着して現場を収集し、TST 22をグリーン・ゾーンに戻しました。
若干の米政府高官が、高官をグリーン・ゾーンへ移動させたあとで、BW社が現場に戻ろうとしたのは意味がないとコメントしています。すでに警護対象が安全なのに、現場に戻る必要はなかったと言うことです。
イラク軍と警察が現場にいたのは、今回初めて知りました。これで、警備員が現場に警察官がいたと述べたことやヘリコプターが目撃された理由が分かりました。想像ですが、自動車爆弾が爆発したことで、近くの住民が銃を持って警戒にあたろうとしたのを警備員が攻撃してきたと誤解し、銃撃が始まったのではないでしょうか。イラク軍は警備員が住民を攻撃しているという連絡を受けて現場へ急行し、最終的に米軍によって事態が収拾されたように見えます。警備員は発砲に対して反撃しただけと証言していますが、信用できません。こういう解釈なら、マリキ首相が激怒したのも当然です。この事件は、アメリカとイラクの連携の悪さを露呈しました。しかし、現段階までで分かったのは概要だけです。少なくとも、BW社の各チームの移動について分単位の報告がないと、状況は判断できません。