昨日、たまたまウィキペディアで2005年7月7日に起きたロンドン同時爆破事件の解説を読みました。そして、その内容に驚きました。私が知っている事実関係と随分違います。この解説文は正にメディア・リテラシーの問題を象徴していると思います。どなたかこの解説の根拠となっている事実を知っている人がいたら連絡を下さい。
《ウィキペディアの解説》
イギリス捜査当局はテロリストによるテロと発表した。発生当時は起爆装置を爆発させた時限式の爆発物によるテロと発表していたが、後日自爆テロと修正した。実行犯は4名で、改札の監視カメラによってそろいのバックパックを背負っている4人の青年が撮影された。しかし、自爆させられた4名は、だまされて荷物を運び、殺害されているという事実が明らかとなり、「自爆テロ」は不適当と考えられる。
4名は郊外のリーズからロンドンまで列車でやってきたが、このとき往復乗車券を購入していた。自爆するつもりなら帰りの切符は必要ない。また、彼らは自宅から自動車で駅まで来たが、列車の切符は駐車料金8時間分とセットになっているものであったことからも、彼らは帰ってくるつもりだったと考えられた。また、実行犯の内、2人は小さな子供がいる上に妻が妊娠中で、内1人は予定日が1週間後に迫っていた。
監視カメラに写っていた彼らの顔は談笑しているようでもあり、さらに売店で買い物したかのような袋をぶら下げており、おおよそ自爆テロをしに行くような雰囲気ではないという。しかも彼らは、自動車運転免許証などの身分証明できるものを身に着けたままであった(この免許証は地下鉄の爆破現場から見つかったが、遺体は激しく損傷し、車体も焼け焦げているのにもかかわらず、奇跡的に無傷で発見された)。
最後に死亡した青年が3名の死亡後、彼らの携帯に動転した声で電話をかけていた。その後、この青年は電車の乗車券を持っていたはずなのにバスに乗っている。これは青年が安全なバスへ避難したことを示す。そのバス内で、この青年があわてて荷物をチェックする姿が目撃されている。これは青年が荷物の中身を知らなかったことを示す。さらに青年が荷物をひざの上に乗せた姿が目撃されている。これは青年が荷物が割れないよう気遣ったことを示す。最後の爆発が起きたバスは誤爆の可能性が高い。乗客が看護師に「人が席に座ったとたんに爆発した」と話している。
《ウィキペディアの解説ここまで》
この解説の気になる点を指摘しますと…
>自爆させられた4名は、だまされて荷物を運び、殺害されているという事実が明らかとなり
主犯の犯行声明ビデオがアルジャジーラで放送されている事実があり、このような工作があったという証拠はないはずです。誰かが遠隔操作で爆発させたとしても、地下鉄の坑道の中は電波が飛びにくいことが気になります。
>自爆するつもりなら帰りの切符は必要ない。
犯人たちが往復切符を買ったのは間違いがありませんが、彼らがさらに事件を起こすために爆弾工場を作ったと考えられていることから、帰還するつもりであったという推定が一般的です。彼らが死んだのは、時限装置のスイッチを入れてから爆発するまでの時間を誤解するなど、何らかのトラブルがあったためと推測されています。
>実行犯の内、2人は小さな子供がいる上に妻が妊娠中で、内1人は予定日が1週間後に迫っていた。
これはまったく理由にはなりません。殉教という栄光の前に、犯人たちが自分たちの子供に頓着しなかったとしても不思議ではありません。
>監視カメラに写っていた彼らの顔は談笑しているようでもあり
殉教して天国に行ける日には笑顔が出て当然でしょう。ベイルートの米軍基地に突っ込んで自爆したヒズボラのテロリストは笑いながら突入して自爆したと言われています。
>そのバス内で、この青年があわてて荷物をチェックする姿が目撃されている。これは青年が荷物の中身を知らなかったことを示す。
中身を確認して爆弾だと知ったのなら、大声で周囲に危険を知らせようとするとか、バスを降りて人混みから離れる、あるいは荷物を置いて自分だけ逃げる、などの行動を取らなかったのかが分からなくなります。犯人が爆弾に何らかの機能不良を見つけたのでチェックしたと考える方が現実的です。
解説はもっとあって、すべて先に引用した仮説に従って書かれています。推理小説風の推定は面白いのですが、推測はどこまで行っても推測です。手に入った情報と照らし合わせて真偽を確認しなければなりません。