女性の自爆テロの背景

2008.1.6



 military.comも女性の自爆テロの増加が気になるようで、この件についてのAP通信の配信記事を掲載しました。

 2005年5月以来、667回起きた自爆攻撃の2%にあたる14回に女性が関与しています。女性の自爆テロは少なくとも107人の死亡を引き起こし、同じ期間に死亡した2,065人の5%にあたると、AP通信は述べています。

 この記事で興味深いのは、女性の警備員がいない時に女性の自爆攻撃が起こりやすいという見解です。結婚した男性以外、女性に触れることが許されないというイスラム社会の慣習のため、女性の警備員がいない検問では女性が身体検査を受けずに素通りすることがあり、自爆攻撃が起こりやすいというのです。女性は米兵に十分接近したところで自爆するのです。そこで、米陸軍は20人の女性を警備員として訓練しました。

 女性の自爆攻撃の小史も載っています。名前が分かっている女性の最初の自爆は、1985年にイスラエル兵2人を殺したレバノン人のサナ・マヘイダリ(Sana Mheidali)です。スリランカのテロ組織タミル・タイガーの女性は24年間に少なくとも60回の自爆攻撃を行いました。パレスチナ・ゲリラやイラク北部のPKKまでが女性を使って自爆攻撃を行います。こうして見ると、結構な数の女性の自爆が行われています。

 女性を使う理由はプロパガンダのためだという見解が記事に示されています。勇敢な男がいないから女性が自爆するのだと宣伝することで、新たなテロリストを集めることができるのです。戦いを女性にやらせるのは男の怠慢と考えるイスラム社会には効き目のある方法です。

 日本のメディアはいつも、こうした小さな変化を取り上げません。イスラムの男たちのテロ攻撃が減少している間に、女性のテロ攻撃が増えているというのは、とても気になる状態です。大きな動きになってから報じるのでは遅すぎます。私はテロ攻撃は沈静化したというよりは、変化しつつある可能性があると考えています。それはテロ攻撃が常態化する、現在よりも悪い状況です。そうなると断言はできませんが、より複雑化して見えにくくなる、慢性的なテロ攻撃の時期を迎える可能性があるということです。残念ながら、現段階では直感に過ぎず、立証することはできません。しかし、戦争においては、証明できるのは常に、その時になってからなのです。そうならないように、先を読んで手を打つのが優れた戦略・戦術です。今の世界は、完全にそういう発想からずれてしまっています。そこに問題を感じるのです。


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