「イラクに行きたくない」米外交官たち

2008.1.10



 米外交官の68パーセントが、イラクへ強制的に派遣されることに反対していることをmilitary.comが報じました。以前に、外交官がイラク勤務を拒否して問題となり、国務省が強制的に派遣することを検討し、外交官たちがそれに反発しているという報道がありました。結果として志願者が十分集まったために、強制派遣は棚上げされたままですが、いずれこの問題はまた浮上するはずです。

 この調査は昨年遅く、米外交官の組合によって、11,500人の外交官を対象に行われました。回答者の4,311人は、最も重要な懸念として、給与の問題、人員配置の公正さ、家族の和の下位として、イラクへの配備と安全上の懸念、戦闘地域での強制的な勤務を、4番目と5番目に位置づけました。また、回答者の44パーセントは、こうした地域での過去数年間の進展により、引退までに海外勤務を続けそうにないことが分かりました。68パーセントは強制的な派遣には「反対する」または「強く反対する」と答え、「支持する」「強く支持する」と答えたのは34パーセントだけでした。自発的にイラク勤務を望まない外交官で、家族との別離を理由にしたのは64パーセント、安全上の懸念は61パーセント、ブッシュ政権のイラク政策への不同意は48パーセントでした。

 回答しなかった外交官も多いとはいえ、かなりの数の外交官がイラク政策に反対していると考えざるを得ません。1万人の傾向を調べるのに1万人を調査する必要はないことは数学的に証明されていて、4千人を超える数は十分すぎるほどです。ここに表れた数字は米外交官すべての傾向にほぼ一致すると考えてよいでしょう。

 予想以上に米外交官は事態を冷静に見て、判断をくだしていると思いました。そして、イラク政策への不同意がこれほど多いとは予想していませんでした。歳が若く、海外勤務を命じられる可能性が高い外交官は半分以上がイラクに行きたくないと考えていると見てよいでしょう。やる気のある米外交官は、イギリスのように仲がよすぎてトラブルが少ない国よりは、日本のようにやるべきことが多い国に行きたがると聞いたことがあります。そんな彼らでもイラクに二の足を踏むとは、かなり衝撃的です。安全なグリーンゾーンで護衛付き。堅固な大使館での勤務が嫌とは、米軍の兵士が聞いたら頭に来るような話です。しかし、イラク政策に同意できないのに、現地で仕事をしたくないと考えるのは道理です。軍人と外交官とでは倫理観が違うという問題もあります。

 国務省からこれでは、大統領選挙で共和党候補が当選する可能性はますます小さいと言わなければなりません。米外務省がこの有様です。日本政府はこのままでよいのかという心配が起こります。ベトナム戦争の時も同様の状態だったことを考えると、誰も反省していないと改めて感じます。


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