military.comによると、テロ事件が激減したイラクのアンバル州では、海兵隊員の防御用の装備を減らすことが検討されています。
イラクに派遣されている兵士のブログには、重たい防具に対する不満が数多く書かれています。テロ事件が減ったこともあり、重たい防具を減らすことになりました。新しい方針では、海兵隊員が喉、首、股間の防弾用防具、脇腹に装着される小火器用の防弾プレートの装着を選択でき、ヘルメットの代わりに柔らかい帽子をかぶれるようになります。選択は地元の指揮官にゆだねられます。
テロ攻撃の減少を象徴する出来事です。しかし、これが対テロ作戦の成果と見ることはできません。戦争においては、勝利の判定に常に慎重であるべきです。特に、第二次世界大戦のヨーロッパ戦線ように、ベルリンを占領し、ヒトラーを捕まえれば戦争が終わるように、戦争の終結がはっきりと分かる戦争と、現在の対テロ戦争は状況が違いすぎます。ヨーロッパ戦線では戦争の進展はベルリンと最前線間の距離で言い表すことができました。対テロ戦争にはそれがありません。アルカイダはイラク全体で活動できる上、イラク以外の地域でも活動でき、イランをはじめとするイスラム諸国、トルコのようにイラク国内のPKKと利害関係を持つ国、イスラム諸国全体にいる潜在的なアルカイダのシンパなどの影響、アフガニスタンのタリバンなどの動向により、状況がどうなるかは分からないのです。イラクの治安が収まっても、テロ活動が別の地域に移動するだけかも知れません。その徴候がパキスタンで起こっています。パキスタンの混乱が深まれば、アンバル州の成果は帳消しです。
対テロ戦争の進展を示す指標は定めにくいのが実状です。とりあえず、シリアからのテロリストの流入が止まったことは評価できます。数年前は、この地域で米軍は何度も掃討作戦を行い、流入ルートを断ち切ろうとしました。その試みのすべては失敗しました。結局は、地元部族の協力が得られるようになってはじめてテロリストを封じ込められたのです。これは、軍隊の活動の限界や地元住民の動向が治安の度合いを決めるということを示しています。これを悲観的な見地から見ると、イラクがイランと長い国境で接していることは、問題の解消に決定的な障害が横たわってると見ることができます。いま大事なのは、治安が「回復した」とか「していない」というステロタイプ的な見方ではなく、現状を慎重に分析していくことです。