military.comによれば、米軍はパキスタン軍を訓練する計画を立てています。米中央軍司令官ウィリアム・J・ファロン大将(Adm. William J. Fallon)は、2015年までを視野に入れたパキスタン軍支援政策を立案するよう指示し、今週自らパキスタンを訪問しました。
なるほど、米軍もパキスタンでのテロの激化を懸念しているわけです。別の記事は、タリバンが春の攻勢を行いそうにないという米軍の見解を伝えています。春の攻勢は昨年も行われませんでしたが、今年は彼らが活動の中心をアフガニスタンからパキスタンへ移したために行われないだろうとみられています。ファロン大将の決断は、こうした状況が背景にあるはずです。まだ、パキスタン政府の承認は得られていないようですが、そうなると見込んでもおかしくない状況です。
これまでのように、資金や武器だけでなく、軍事顧問団を送り込む段階にきたのです。どんどんビンラディンの願ったとおりになっていくように見えます。これは対テロ活動が進んでいるというよりは、テロが拡大していると見るべきです。ちょうど、ベトナム戦争が拡大していったのを思い出させます。大規模な地上部隊の派遣はなくても、少数の特殊部隊が派遣され、精密爆撃などの誘導を行う可能性があります。
対テロ連合国にチャンスがあるとすれば、記事に書かれているように、アルカイダとタリバンがアフガニスタン人を失望させたという事実です。イラクでスンニ派がアルカイダへの協力を止めたように、地元民が協力しないといくらアルカイダでも活動はやりにくくなるのです。これは米軍が住民の協力が得られない時期に成果をあげられなかったのと同じです。しかし、アルカイダが失敗から学び、手法を変えると、また話は変わります。この辺に着目しながら状勢を見ていく必要があります。
イラク、アフガニスタン、パキスタンとテロは拡大してきましたが、仮にこれらの地域で活動が終息した場合、テロの時代は終わったと言えるのかは、今から考えておくべき問題です。戦争の通例から言うと、これらは終戦を意味しません。ロンドン爆弾事件のような、先進国でのテロ事件へと移行する可能性もあります。あまり報じられていませんが、サウジアラビアでも常に反政府勢力が活動しています。
それにしても、ブッシュ政権が今ごろになって中東和平を言い出したのには驚かされました。任期が1年を切り、成功しなくても困らない段階になって、計画的に着手したようにしか見えません。成功しないことは政権も分かっているのです。任期が終わったあとで、「何もしなかった」と言われるのが嫌なので、実績を作るためだけにやっているだけです。こんな志だから駄目なのだと言わざるを得ません。湾岸戦争が終わったあとで、当時大統領だったジョージ・H・W・ブッシュ大統領(現在の第43代大統領の父)は、今後は中東で不平等が生まれないような政策をとると明言しました。いまや、そんな言葉は影すらありません。