military.comによると、米海軍のアブラハム・リンカーン空母攻撃群は環境保護団体の訴えによって中止していたアクティブ・ソナーを使った訓練を再開しました。
音を使って水中の目標物を探知するアクティブ・ソナーは、鯨など海洋哺乳類の方向感覚を狂わせ、座礁事故を起こさせるといわれてきました。このことが十分に立証されたかどうかを、私は知り得ないのですが、昨年8月、連邦地裁は米海軍にアクティブ・ソナーの使用を禁じました。今月早く、連邦判事はソナーが鯨に対する影響を減らす法律を一時的に停止しました。その前日、ブッシュ大統領は環境に関する法律について海軍を免除していました。連邦判事はこれを受けて法律を一時停止にしたのでしょう。
この事件は、訴えと訓練再開のいずれの合理性もよく分かりません。どうコメントしてよいかも分かりません。日本捕鯨協会のサイトでは、恐怖,疾病,寄生虫による聴覚障害,地磁気の変化,海洋構造の変化,個体群の調節を理由にあげているものの、明確な原因は不明だとしています。IFAWのサイトでは、ソナー訓練が行われると付近で座礁事故が起きると主張し、EUがすでに規制を敷いていることを紹介しています。実戦では、アクティブ・ソナーはそれほど頻繁には使われません。しかし、訓練ではソナー要員が慣れるために、繰り返し使うことがあるかも知れません。
前に紹介した時にも書きましたが、こうした動きが極めてアメリカ的だと感じるだけです。海洋哺乳類への認識は、日本とアメリカとでは大きく違います。日本人もイルカやオットセイなどには関心を示しますが、鯨に関してはそれほどではありません。最近は海岸に打ち上げられた鯨を救助するようになりましたが、かつては食べ物としか見ていませんでした。環境保護が軍事活動にも影響を与える時代になったことは、歴史的にもユニークなことです。軍事問題では、環境破壊はやむを得ない被害として認識されてきましたが、それが許されない時代が来たことは、核戦略や化学兵器などの問題ですでに定着しています。そういう発想が海洋生物に対してまで及ぶのかどうかが問題の焦点です。こうした事柄が軍事問題にどう影響を与えていくのかに注目したいと考えます。