先日起きた、海上自衛隊の第1術科学校で、特殊部隊「特別警備隊」の訓練生が徒手格闘訓練の最中に死亡した事件が、military.comで報じられました。この事件の中間報告が出たのに合わせて報じられたようです。
この記事には、日本で報じられていることと、ほぼ同じ内容が書かれています。自衛隊内部に、いじめ・制裁とする意見と、壮行のためとする意見があることも紹介されています。しかし、これで米軍にこの事件が広く知られることになりました。訓練中に死者を出すのは恥ずかしいことで、それが知られることで自衛隊の名折れとなったわけです。
海自の中間報告では、この訓練は不必要だったと結論されているようですが、私もそう考えています。辞めることが分かっている者を訓練しても意味がありません。「餞」のために格闘をやるという発想が理解できません。これでは暴走族がグループを抜ける団員を、集団リンチで「けじめ」をつけるという発想と変わりがありません。こんな不合理な発想で訓練をしているのなら、いずれもっと大きな事故を起こす危険があると考えるべきです。
書評で紹介している「『戦争』の心理学 人間における戦闘のメカニズム」では、訓練のポイントとして、「訓練場から敗者を送り出さないこと」をあげています。難しい訓練をさせるよりも簡単な訓練で自信をつけさせることが大事であり、「訓練教官の目標は、勝った経験をさせて外へ送り出すことなのだ。」と、著者デーヴ・グロスマン元中佐は述べています。
結局のところ、この事件は、「特別警備隊をただで辞めさせたら隊の格好がつかない」という理由で行われたとしか表現のしようがありません。部隊の見栄のために隊員が死んだのです。