傷痍軍人の再就職を軍が支援

2008.10.24



 military.comによれば、陸軍人事部は負傷した兵士とその配偶者を民間人として雇用するプログラムを開始しました。これは民間会社が傷痍軍人を雇いたがらず、退役軍人の再就職が難しいため、軍の中で民間人として勤務させるという計画です。

 人事アドバイスセンター(the Civilian Personnel Advisory Center: CPAC)により、過去4年間で43人の負傷した兵士が軍の中で民間人として雇用されました。9月25日、ブッシュ大統領が署名した政令は、傷痍軍人の配偶者と戦死した軍人の配偶者を官庁に優先的に雇用させます。

 元先任下士官カルヴィン・マクロイ(Calvin McCloy)は、イラクのラマディでIED攻撃により火傷を負いました。このため、彼は陸軍を除籍されることになり、ブルック陸軍医療センターで数ヶ月間の火傷治療を受けた後で、フォート・ライチー基地の戦士転換大隊(the Warrior Transition Battalion)に行きました。そこで書いた履歴書はCPACへ送られ、面接が行われ、軍の民間人の退職金を処理するコールセンターに再就職することになりました。

 記事には他にも色々書かれていますが省略します。

 負傷兵全体の数を考えると、43人という実績は、何の足しにもなっていません。イラクだけで、これまでに約3万人の負傷者が出ています。この数はCPACの取扱対象と完全に一致はしていないものの、ざっとした数字はつかめます。アメリカは地域コミュニティがしっかりしているので、各地にも民間や自治体による同種の活動があります。それでも、負傷して軍を除籍された人が再就職するチャンスは少なく、映画「フォレスト・ガンプ」のダン少尉みたいに、人生に絶望して飲んだくれになってしまう者も出るわけです。向上心の高い人ほど、年金に頼る生活は逆に苦痛になってしまいます。

 傷痍軍人に関する問題を調べるのは、戦争という社会現象を理解する上で、兵器の性能を知るよりも遙かに大事です。この分野には、私たちの中に内在する矛盾が露呈しています。みなさんに是非とも注目してもらいたい問題なのです。

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 なお、military.comによると、イラク南部のバビル州(Babil)の治安権限がイラクに移譲されました。これで、18州中12州の治安権限がイラクに返還されたことになります。


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