EUが海賊対策のために艦隊を提供

2008.10.3
同日 11:00修正



 military.comによると、ソマリアで起きた海賊事件に業を煮やしたEU8ヶ国が、海賊から海運を保護する海事保安隊(maritime security force)に、海軍艦を提供することになりました。

 ファイナ号の拉致事件後、この決定がなされました。ちなみに、この事件の人質は20人で、その内の一人は病気が原因で死亡したとみられています。それが誰かは分かりませんが、私は熱中症にかかっているという船長だと推察します。この記事によると、AP通信がロシア艦には海兵隊と特殊部隊が乗り込んでいると報じています。船だけ派遣しても意味はないわけで、これはロシアとしては当然の備えです。

 フランス国防省ハーブ・モリン(Herve Morin)は、非公式なセッションは正式な作戦開始のセッティングではないと述べ、11月10日のブリュッセルでの防衛大臣会議で必要な承認がなされるだろうと述べました。派遣される艦艇の数やタイムテーブルなどの詳細が詰められる必要があります。すでに、ベルギー、キプロス、フランス、ドイツ、リトアニア共和国、オランダ、スペイン、スウェーデンがすでに志願しました。アフリカの研究者ロジャー・ミドルトン(Roger Middleton)によると、EUはこうした保安隊を何度も計画してきましたが、今回の事件が決断を後押ししたと述べています。今年はアフリカ海域で62隻の船が海賊の攻撃を受けています。

 ウクライナ共和国の輸送船が海賊に襲撃されたことで、ロシアが解決に乗り出し、こうした動きに対してEUが具体的な政策へ向かい始めました。これはグルジア紛争で行き詰まったEUとロシアの関係を融和に持ち込む意味合いもありそうです。EUはロシアとも安全保障を共有しているのだ、という政治的メッセージをロシアに送り、対立を和らげるのです。もちろん、それが目的というわけではありませんが、本来の目的の他に、それがあるとしても何ら不思議ではありません。効果があるにしても、限定的なものでしょうし、それでグルジア問題が解決するわけではありません。しかし、下地作りにはなります。ロシアには、この海事保安隊に参加を希望するという選択肢もあります。こうして長期的にお互いに損のない落としどころを探す下地を作るわけです。海賊たちには、そのためのダシになってもらうということです。


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