女性兵士に関する重要な報道がありました。military.comによると、イラクとアフガニスタンで従軍し、後で何らかの治療を受けようとした米軍の女性兵士の7人に1人(約14.2%)が、性的な嫌がらせか暴行を受けていると、復員軍人援護局の研究家が報告しました。
それとは対照的に、同種の体験を持つ男性兵士は0.7%に過ぎません。性的な嫌がらせや暴行を体験した女性兵士の数は、鬱病や薬物中毒になった者よりもPTSDを被る率が2.3倍も多いことも報告されました。
アメリカが不思議だと思うことの一つに、兵士の尊厳を実態以上に認めることがあります。この場合の兵士は男性を指し、女性については言わないのが普通です。戦闘に出る兵士のほとんどは男性で、戦死する可能性があるため、その名誉を最大限に認めようとするのです。ところが、軍隊内部でも犯罪事件は起こるし、そうした事件の報道を目にすることは珍しくありません。このサイトでも、数は少ないのですが、そうした事件を紹介したことがあります。この種の事件は、日本の新聞ではほとんど報じられないし、軍事関係の専門誌でも取り上げられないので、ほとんど起きていないと認識している人が多いのですが、世間並みに起きるのです。「犯罪捜査官ネイビーファイルズ」のように、海軍の法務部(JAG)を舞台にしたテレビドラマがあるほどです。(ちなみに、番組の紹介ではJAGは犯罪捜査部だと紹介していますが、犯罪捜査部という名にふさわしい部署はNCISで、JAGは法務部とするのが正確です)
それでも、アメリカ人は兵士に敬意を払いたがるもので、そうした態度は実は、女性兵士に対する性的な虐待を覆い隠す役目を果たしているように、私には思われるのです。しかし、軍隊は若者を厳しい規律の中で、任務をこなすように条件反射をつけ、戦闘という危険でストレスの溜まる作業に就かせます。基地という場所は、軍事施設であるために周囲の社会から隔絶され、その中で男女の兵士が一緒に生活しているわけです。こうした環境で性的虐待が起こらないと考える方がどうかしています。そして、事件が起きた時、被害者が告発するのは相当な精神エネルギーを必要とします。軍法では強姦罪の最高刑が死刑なのは、元々軍隊ではそういう事件が起こりやすいことを反映していると考えられます。
軍隊は性的暴行が起こりやすい場所であるという程度に認識していないと、その実態を見誤ることになります。いくら国民を守って死ぬこともある兵士でも性犯罪は重大犯罪です。以前から、米軍内部では女性兵士に対する性的虐待があると言われていました。今回、復員軍人援護局が重要なデータを発表したのだから、国防総省はこれを受けて、防止策の立案に乗り出すべきでしょう。