ネルパの水兵が消火装置を作動させたと告白?

2008.11.14



 システムエラーに見えた原潜ネルパの事故ですが、military.comが人為的な殺人だったというロシア当局の見通しを報じました。

 ロシアの調査委員会の広報官ウラジミール・マーキン(Vladimir Markin)は、一人の水兵が消火装置を作動させたと告白した水兵の行為について、故殺罪の調査が行われていることを明らかにしました。水兵の名前など、詳細は明らかにされていません。これまでの公式見解では、消火装置は自動的に作動したとされていましたが、声明はそれを否定しました。

 記事は非常に短く、第一報を伝えるに留まりました。しかし、これは衝撃的な記事です。昨日紹介した生存者の証言では、システムは正常に動作しておらず、システムエラーを連想させましたが、それが水兵の告白によって否定されたことになります。そうすると、消火装置が水兵によって不正に作動させられたために正常に動作しなかったのと、もともと正常ではなかったのいずれかを考える必要があります。

 いじめられていた水兵が復讐のために消火装置を作動させたというのは、最も考えやすい推測ですが、殺意のない故殺罪で調査が始まったので、そうした動機はなかったということになります。故殺罪は、日本の法律の過失致死に近い、殺意のない殺人行為に適用されます。通常の業務の中で、たとえばテストの最中に、誤って作動させたということかも知れません。それならば、通常ではないプロセスで消火装置が作動してもおかしくはありません。しかし、具体的な操作の内容までは想像ができません。

 調査は始まったばかりで、まだこの発表を鵜呑みにはできません。水兵が述べるとおりの方法で、生存者の証言のとおりに消火装置が作動することが証明される必要があります。しかし、水兵のミスで事件が起きたとすれば、ロシア潜水艦隊の能力の低下は否定しようもなくなります。


Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.