space-war.comが、水兵が原潜ネルパの事故を引き起こしたというロシア当局の発表について、続報を報じています。
イェゼドネヴニィ・ザーナル誌(Yezhednevny Zhurnal)の防衛コメンテーター、アレキサンダー・ゴルツ(Alexander Golts)は、水兵は広範なミスのスケープゴートになるかも知れず、彼が唯一の原因とされるなら絶対的に不公平であると述べました。防衛専門家のパベル・フェルゲンハウアー(Pavel Felgenhauer)は、ロシアは常にスケープゴートを探す傾向があり、ソ連崩壊以降、資格を持つ専門家の不足が大惨事の原因となってきたと述べました。政府諮問機関「パブリック・チェンバー(Public Chamber)」の法執行委員長のアナトリー・カチャーナ(Anatoly Kucherena)は、調査委員会がそんなに早く犯人を見つけ出したことはまったく厄介だと述べました。
タブロイド誌「トゥヴォイ・デン(Tvoi Den)」は、ガスマスクの不完全さが原因かも知れないと、生存者の証言を引用しました。イェヴジェニー・オヴザニコフ准尉(warrant officer Yevgeny Ovsyannikov)は、呼吸装置を装着したものの、7〜15分しか動作せず、数名の死者はガスマスクをつけたままだった、と述べました。別の生存者ディミトリー・ユサチャオフ(Dmitry Usachyov)は、呼吸装置はまったく動作しなかったと述べました。
この記事の主旨には賛成ですが、主張の根拠が書かれていないのが問題です。それぞれの専門家の意見は、結論だけで根拠が書かれていません。
しかし、調査委員会の発表に疑問があるのは、前に述べたとおりです。誤って作動させたとしても、生存者の証言のような状況が起こり得るとは考えにくいのです。消火装置は非常ボタンがあるだけで、それを押しただけでは、異常な動作は起こりません。もちろん、消火装置が最初から壊れていた可能性はあります。あるいは、テスト用のモードで操作を誤った場合、通常とは違う動作をするのかも知れません。液化ガスが気化せずに放出されたという証言は、それ自体にも疑問はあります。液化ガスは放出と同時に自然現象により、気化するはずです。しかし、実際に起きたのならば、何か原因があるはずです。
もし、ロシアが、水兵が単に非常ボタンを押したために事件が起きたと発表するようなら、それは疑ってかかるべきです。水兵に責任を押しつけ、システムの欠陥についての責任を回避しようとしているためだと考えられるのです。
生存者の証言について言うと、ガスマスクをつけたまま死んだ者がいたことは、必ずしもガスマスクの欠陥を意味しません。ガスマスクは装着方法を誤ると効果がない場合もあります。それは単純に装着の方法で、上から被るように装着すると、有毒ガスをマスクの中に入れたまま装着してしまいます。マスクは顎の方から先に装着していく必要があります。あるいは、ガスマスクをつけた時には、すでにガスが充満して、装着のタイミングが遅かったために死んだのかも知れません。呼吸装置については、西側の潜水艦では20分間動作するものを装備していると聞きます。それと比べると、確かに動作時間が短すぎる印象はあります。
しかし、ここで注意しなければならないのは、これまで報じられた証言は、事件の一部しか表現していないことです。もし、証言者たちが実際とは違うことばかり述べていたら、これらの推測は真相から外れているはずです。他の生存者は何を言っているのかをすべて調査して、はじめて真相に近づけるのです。この事故に限らず、あらゆる事件を考える時、報じられたことが事件のすべてと考えてはいけません。我々は常に、事件の一部だけを、誰かが咀嚼した情報だけを見せられているのです。現段階では、生存者は物理的に起こり得ないことも述べており、まだ結論を出すには早すぎます。
それから、インドにリースされると言われていた原潜ネルパですが、ワシントン・ポストはそれを否定しました。ロシア軍参謀本部のニコライ・マカロフ大将(Gen. Nikolai Makarov)は、ネルパは事件の捜査が終わり、消火設備が修理されてから、ロシア海軍に配備されます。また、マカロフ大将はネルパの他の機能は良好だとも述べました。