グルジア領内にロシア軍基地が開設

2008.11.19



 space-war.comによれば、ロシア国防省が、ロシアは2009年にグルジアのアブハジアと南オセチアに軍事基地を設けると発表しました。

 ロシアはアブハジアの西部にあるグダウタ(Gudauta・kmzファイル)と南オセチアのツンヒバリ(Tskhinvali・kmzファイル)に基地を設ける計画を立てています。停戦協定に従い、ロシアは約4,000人の軍人をグダウタに残し、アブハジア内の兵員の大半を撤退させることになっています。参謀総長のニコライ・マカロフ大将(Gen. Nikolai Makarov)は、友好と援助条約に従い、南オセチアとアブハジアには、それぞれ約3,700人の軍人を配置すると述べました。

 ロシアは南オセチアとアブハジアを合わせて7,600人を配備すると主張しており、10月下旬には南オセチアだけで7,000人の兵数が確認されていました。しかし、最終的に当初の主張通りの人数になるようです。一時的に増加した兵員は、基地建設のための増員だったのかも知れません。

 Google Earthでツンヒバリから北に向かうルートを辿ってみてください。そのルートはロシア国境付近で山の中に消えます。これがロキ・トンネルの南側の入り口です(kmzファイル)。ロシア国境を越えるように北側に移動すると、こちらにも山の中に入る道路があります。これがロキ・トンネルの北側の入り口です。スケールで計ってみると、ロキ・トンネルが約5kmの長さのトンネル(kmzファイル)であることが分かります。ツンヒバリはロシアから来た部隊が物資を集積し、補給基地として活用するために必要な場所なのです。ここから北はルートの側面は山地になっており、地上軍を寄せ付けません。つまり、ツンヒバリはロシアからのルートの出口なのです。

 ロシアが南オセチアに軍事介入するためには、この長い山道を進撃路・補給路として活用しなければなりません。こうしたルートは通常なら軍事的な弱点となります。部隊は長い隊列を組んで移動しなければならず、物資を集積する場所もほとんどありません。車両が使う燃料を補給する場所も必要です。だから、このルートを攻撃すれば、ロシア軍が南オセチアで戦力を発揮することはできなくなります。ロシア側からNATOの空軍力を持ってすれば、道路を破壊することは簡単です。しかし、そうすることは、戦いが装甲車と小火器だけでなく、大規模な空軍力の介入を招きます。ロシアにとって、このルートを攻撃されれば、南オセチアを守るためには空軍力を用いるしかなくなります。そして、そうなったことの責任はすべてNATOにあると堂々と宣言できることになるわけです。NATOも、この状況では空軍力を用いてグルジアを支援しないと格好がつかなくなります。結果として、グルジアだけでなく、NATOとロシアが全面対決する大戦争に発展しかねません。だから、NATOはそこまではできません。一方、ロシアも状況を利用して好き放題にやれば、NATOが腹をくくり、本格的なグルジア支援をはじめかねないと考えます。そこで、少し控えめの態度に出ているわけです。あとは、独立運動を巧みに強化していき、非軍事的な方法で両地域を独立させれば、ロシアの目的は達成されます。

 アブハジアのグダウタに基地を設けたのは、もともと、スフミ(kmzファイル)に国平和維持軍の総司令部が置かれており、その前方に出るのを避けたのだと考えられます。グダウタの西方数kmの場所を見てください。軍用空港があるのが分かります。グダウタの港は小規模ですが、空港が利用できます。空輸で直ぐに増員できる形になっているのです。

 こういう状況において、NATOがどんな態度にでるかが重要になります。そして、この問題は、バラック・オバマ次期大統領にとっても重大な問題となるでしょう。どんな人たちが大統領を補佐する役目に就くかが、これからのグルジア問題を左右します。


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