米陸軍が半世紀ぶりに死刑を実施へ

2008.11.22



 一般の法律よりも厳しいことで知られる軍法ですが、実際に死刑が行われることは希です。どれくらいの頻度で死刑が実施されているのかについては、情報がさほどありません。military.comが来月、50年ぶりに死刑を実施することを報じています。

 元陸軍のコック、ロナルド・A・グレイ(Ronald A. Gray)は、12月10日に処刑される予定です。彼は1986年4月から1987年1月までの間に、ノースカロライナ州のフェーエットビル市(Fayetteville)で、4件の虐殺と8件の強姦に関与したとして逮捕されました。この時期、彼はブラッグ基地(Fort Bragg・kmzファイル)に勤務していました。彼は2人の女性を殺害した件で有罪となりました。彼は軍法廷と最高裁に上訴しましたが、2001年に棄却されました。グレイには依然として二つの選択肢が残されています。死刑の実行を中止させるために連邦上訴裁判所へ提訴するか、大統領に死刑の実行を再考させる請願を出すことです。しかし、どちらも死刑を避ける見込みは薄そうです。死刑は薬物の注射によって行われます。統一軍規法典が制定された1951年以降、死刑に処せられた米軍人は10人だけです。最後に死刑が行われたのは1961年で、陸軍のジョン・ベネット二等兵が11歳のオーストラリアの少女に対する強姦と殺人未遂で絞首刑に処せられています。

 軍人でも死刑になるのは極めて珍しいことです。一般の犯罪ではない、戦争犯罪に関係することで死刑が行われるのも希です。現在、死刑自体に対する見直しが進んでいますが、こうした社会情勢が生まれる前でも、軍人の死刑はそう多くないことが分かります。軍事問題にあまり関係がなさそうに見える軍人の死刑ですが、実は結構、重要です。軍人にどのような処罰規定があり、量刑の相場を知っておくことは、その軍隊がどのような行動をするかを考える根拠になるのです。兵器などのハードウェアにしか注目しない手法では、軍人たちの審理を読み取ることはできません。そういう意味で、平和を求める人たちには、軍隊の文化といったものについて、よく研究して欲しいのです。

 ちなみに、ブラッグ基地は空挺と特殊部隊の訓練を行う基地で、ノースカロライナ州にあります。ハーネット、カンバーランド、ホークの3つの地方にまたがり、49.2平方kmの広大な敷地を持ちます。Google earthで見ると、演習場の森には連絡用の道路が走り、あちこちに訓練用の塹壕や射撃場、その他の施設が配置されているのが分かります。フェーエットビル市は、この基地の東側にある、人口約20万人の都市です。


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