ミュージシャンたちが、グアンタナモベイ収容所で音楽を囚人を拷問するために使わないよう要請していると、military.comが報じました。
グアンタナモベイ収容所では1日20時間、「AC/DC」「クイーン」「パンテラ」など、ヘビメタの曲が大音響で流されていました。記事によれば管理番号200343の囚人がこれによって自殺しました。多くの者が心を病み、金切り声を上げたり、壁に頭を打ち付けるようになります。マッシヴ・アタックなどのグループ、トム・モレロなどのミュージシャンが、こうした楽曲を囚人の拷問に用いることに反対し、キャンペーンを開始しました。グアンタナモベイ収容所の所長、デイビッド・トーマス海軍少将(Rear Adm. David Thomas)は、現在は使っていないと述べましたが、将来については除外することを否定しませんでした。半年前から所長を務めるトーマス少将は、自分が在任中には音楽を使っていないと述べています。同収容所の広報官ポーリン・ストラム海軍中佐(Navy Cmdr. Pauline Storum)は、音楽が使われていた期間について詳細を明らかにしませんでした。同収容所に配置されたFBI捜査官は、こうした音楽の使用は普通のことであり、16時間の音楽と照明と、4時間の静寂と暗闇を繰り返すと、囚人が4日間で口を割ったと、ある尋問官が彼に自慢したといいます。アフガニスタンで逮捕されたイギリス人、ラウル・アハメド(Ruhal Ahmed)も音楽による拷問を受け、その証言が記事書かれています。音楽はハードロックだけでなく、子供向け教育番組の歌も使われており、その作曲者たちを怒らせています。
ロックは権力への反抗が根底にあるわけで、それが弾圧に使われるのは、制作者たちの本意ではありません。しかし、この抗議は少し遅すぎた感があります。すでに米政府は収容所の閉鎖に向けて走り出しており、米軍内部にすら収容所に批判的な声が生まれています。ミュージシャンはもっと早くにもっと強烈な抗議活動を行うべきだったと思います。これは映画界についても似たようなことがいえます。イラク侵攻に対する明確な反対意見を盛り込んだ映画が制作されるまでには、かなりの時間がかかりました。「華氏911」はタイミングが早すぎたのか、保守層からの批判に曝されました。残念ながら、芸能人は多方面に人脈が通じているためか、こうした時に即座に行動できない傾向があります。割と早い段階から、個人としてイラク戦に反対したり、疑問の声をあげた映画人はいたものの、作品が制作されるまでには、多すぎる時間が費やされました。作品上に明確な変化が確認されたのは、今年になってからです。しかし、ハードロックのジャンルは、元々反権力の立場ですから、もっと早くに動き出せてよかったはずです。この辺に社会の矛盾を感じます。脅威が目の前にあると、誰もが硬直し、思考が短絡して、保守的な方向に固まってしまうのです。ロックミュージシャンもその傾向から逃れられないわけです。
グアンタナモベイ収容所は、キューバのグアンアタナモベイ海軍基地(Guantanamo Bay Naval Base・kmzファイル)の施設内にあり、大半の抑留者を収容しているデルタ基地(Camp Delta・kmzファイル)、すでに閉鎖されたイグアナ基地(Camp Iguana)とXレイ基地(Camp X-Ray)があります。