ロシアがトポルM系ミサイル開発を推進

2008.12.2



 space-war.comによれば、ロシアは新型ICBM「ブラバ(Bulava)」の発射テストを行い、成功したと発表しました。また、同サイトの別の記事によると、ロシアはICBM「RS-24」を2009年12月から配備すると発表しました。

 ブラバミサイルは白海にいる原潜ドミトリー・ドンスコイ(Dmitry Donskoy)から発射され、約6,000kmを飛んで、カムチャッカ半島にあるクラ実験場(Kura test site・kmzファイル)の標的に命中しました。過去6回のテスト中4回は不成功に終わりました。ブラバは10カ所の個別の標的を核攻撃でき、最大射程は8,000kmで、2005年12月にはじめて実験に成功しています。このミサイルは地上配備型のトポルM(Topol-M)の潜水艦バージョンで、ボレイ級(Borei)に搭載されます。

 ロシアは先週、RS-24の3度目の発射実験に成功し、6,000km離れたクラ実験場に到達しました。2007年5月と12月にも実験が行われました。RS-24は3個の核弾頭を搭載できるとされています。RS-24は東ヨーロッパに配備されるアメリカのミサイル防衛を突破すると、ロシアは主張しています。RS-24もトポルMの技術を元に開発されました。

 トポルMは、アメリカのミサイル防衛を無にする能力があるとロシアは宣伝しています。実際にそれだけの力があるかどうかは不明です。ロシアの主張は、ロシアのアメリカのミサイル防衛能力の見積もりに基づいており、それが実態と違っていれば、主張も誤っていることになります。他国にミサイル防衛の正確な能力を知られたくないために、この分野の情報はひどく制限されています。不十分な情報で判断した場合、科学的な推測も時には誤るもので、過去にもそうした実例が色々とあります。だから、トポルMが本当にミサイル防衛システムを突破できるかどうかは分かりません。逆に、ミサイル防衛がトポルMを阻止する能力があるかも分かりません。それぞれの国がそう言っているだけの話です。専門家は色々なことを言いますが、鵜呑みにしないで、その内容をよく吟味することです。

 アメリカがミサイル防衛システムを開発している場合、ロシアは自分も同じシステムを開発するか、それを突破するICBMを開発するか、いずれかの選択肢があります。後者の方が数段費用がかからないことは以前から指摘されていることで、経済的な余裕を考慮して、ロシアはそれを選択したのです。ブラバの開発には手間取っているようですが、RS-24は実用のレベルに達したようです。とにかくも、ロシアはトポルM系ミサイルを増やすことで、核戦略でアメリカに対抗しようとしています。今後も、ここに注目していく必要があります。


Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.