米海軍が大量の余剰在庫で無駄遣い

2008.12.20



 military.comによれば、米海軍は不必要な装備と部品を抱えており、毎年75億ドルを余計に浪費し、保管費用に数百萬ドルを費やしていると政府説明責任局(the Government Accountability Office)が報告しました。

 2004年〜2007年までの海軍の在庫を調査した報告(サマリー全文)によると、必要以上のスペアパーツが数年から数十年分も備蓄されるという運営ミスがありました。国防総省はミスを認めましたが、実際の超過在庫は報告の10%だけで、残りは予算手続きに従った、必要な部品であるあると主張しています。

 たとえば、すでに航空機の修理で使われないF-18のファンブレードが13,852本、360万ドル分が保管されています。時代遅れの戦闘システムでしか使わない17年物のソナーセット、20年物の電子装置が沢山保管されています。不要な部品を保管するために、年間1,800万ドルが使われています。全体で、米海軍は装備品のスペアパーツの保管に年間190億ドルを使います。海軍補給システム部(Navy Supply Systems Command)は報告書に対する回答として、2009年末から2010年初期を、在庫品の追跡と発注、管理を向上させる目標としました。この報告書は、バーニー・サンダース上院議員ソロモン・オルリッツ下院議員の要請で書かれました。

 軍隊は物が不足するよりは余っている方が安心するもので、不要に思えるものも、何かの使い道があると考えて取っておくことが多いものです。また、多くの装備品は長期間の保存に耐えるので、過剰な保管は余計に増えます。米海軍のような巨大な軍隊では、余剰品の数も多くなり、このような事態が引き起こされます。国防総省が報告書に対して反論をしているのも、余剰品に対する考え方が違うからで、単純に国防総省の言い分が正しいと考えるべきではありません。基準をクリアするのは一種のゲームみたいなもので、軍人はそうした作業の達人だからです。それを検証するには予算手続きの内容を精査する必要があり、それは日本人にとってはかなりしんどい作業となります。米軍の場合、まだしも問題を追及する期間が政府内にあるからよいのですが、自衛隊の場合、憲法第9条問題だけが取り上げられ、個々の予算に関しては空白地帯となっており、米軍以上にチェックされていない危険性があります。

 なお、2003年9月6日から建造が始まっていた空母「ジョージ・W・H・ブッシュ」ですが、予定の1月10日までには完成しないとmilitary.comが報じています。艦は97%完成していますが、2009年早期までには就役できない見込みです。当初の契約では4月に就役する予定でした。しかし、予定通りには進まず、11月11日に就役日を修正して再契約が結ばれました。それも守られず、年末までには完成すると発表されたのですが、それも遂行できなかったのです。こうした再契約は見積もりの超過を招きますが、海軍も造船所もそれについては公表しません。それでも、来月10日にが行われる見込みです。艦名が代1代大統領の名前であり、その息子である大統領がホワイトハウスを去る数日前に就役式が予定されたため、両者が出席して式典を行うのが望ましいのです。こうした特例は1986年にロスアンゼルス級潜水艦シカゴが就役した時にもみられました。ちなみに、ジョージ・W・H・ブッシュの建造費は62億ドルと発表されています。どれだけ追加費用がかかるのかが気になります。


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