昨日、米軍が公表したアフガニスタン増派について考えるため、ISAFの現在の配備を再確認しました。ISAFのウェブサイトには、次のような説明がありました。
ISAF司令部
カブールに本拠を置くISAF司令部(the ISAF Headquarters)は、その任務の作戦指揮を行っています。同じく首都に置かれている地域指揮本部(the Regional Command Capital: RCC)とは異なっています。40ヶ国、1,700人の隊員がISAF司令部を構成しています。
ISAF地域指揮系統
地域指揮部は、ISAFの統制下で、その地域を担当する地域復興チーム(the Provincial Reconstruction Teams: PRT)が行うすべての民間と軍の活動を調整します。それぞれの地域指揮部は指揮統制司令部(Command and Control: C2 HQ)と、基本的な補給施設である前進支援基地(Forward Support Base: FSB)で構成されます。現在、5つの地域指揮部があります。
先の記事では、カナダ軍と英軍を支援するためにヴァルダク州とローガル州に増派すると言うことでした。しかし、ヴァルダク州にいるのはトルコ軍(860人)で、ローガル州にいるのはチェコ軍(415人)です。イギリス軍(8,745人)はヘルマンド州に、カナダ軍(2,750人)はカンダハル州にいます。一方、国内報道では南部に配置されるとされています。別のmilitary.comの記事では、カルザイ大統領がマレン議長から、パキスタン国境付近に配備されると聞いたと報じられています。すでに紹介しているように、この秋、パキスタン軍との共同作戦が行われたのはアフガンのクナール州(Kunar)で、パキスタン軍はバジョール地区(Bajur)で掃討作戦を行いました。増派部隊が配置されるのは、この辺だと推測できます。しかし、一体どうして、こうした見解の違いが生まれたのかが気にかかるところです。
まとめると、おそらくこういうことでしょう。増派部隊が配備されるのはヴァルダク州とローガル州で、まずトルコ軍とチェコ軍の兵数不足を補います。さらに、空路を利用してヘルマンド州のイギリス軍とカンダハル州のカナダ軍を支援します。しかし、アフガン国境付近へも配備すると約束したということは、状況によっては国境付近の掃討作戦の支援にも回るということです。これは明らかに総花的で、狙いのはっきりしない方針です。マレン議長が単に外交辞令的な発言をした可能性もありますが、上の地図を見て、今後どのような動きになるのかを考えると、よい想像はできません。結局のところ、戦力を分散してばらまいているだけに見えます。
増派部隊の内、2個旅団をカナダ軍の支援、1個旅団をイギリス軍の支援に回すと、それぞれが1万人規模のまとまった軍勢となります。これで、広大な両州を統治できるかどうかも難しいところですが、残り1個旅団でヴァルダク州とローガル州のチェコ軍とトルコ軍を支援するのは、明らかに兵数不足でしょう。これら両州では武装勢力の増加が確認されています。その上で、アフガン国境地帯に派遣できる増派部隊があるとは考えられません。ここから、増派は20,000人規模ではなく、最大値の30,000人まで拡大される可能性が高く、4個戦闘旅団だけで済まなくなる可能性も高いということになります。むしろ、30,000人を超えるレベルまで増員される見込みが高いと見ておくべきです。その兵数でも問題を解決するには不足です。
タリバンをアルカイダから引き剥がすのは困難ですが、タリバンが国際社会からの承認を受けたがっているのも事実です。その低い可能性に成功を賭けなければならないのが、現在のアフガン戦略です。また、国際社会にとっては、タリバンの教義は受け入れがたいもので、政府組織として承認しがたく、国際社会にとって北部同盟の延長であるアフガン政府の方が支援しやすいのは言うまでもありません。タリバンを政治組織として承認するためには、国際社会も何か考え方を変える必要があり、それが問題解決の障害になっています。武力による鎮圧と、民生支援で武装勢力の価値を減少させ、武装解除に持ち込むのか。どちらの戦略で行くのかも、まだ決まっていないようなのでは、アフガン戦争の決着は当面見えません。