イスラエルがガザ地区を空爆し死傷者多数を出したことが国内でも報じられています。ワシントン・ポストの記事からポイントを拾い上げ、国内報道が触れていない点を見てみました。
ガザ地区からはロケットによる攻撃が続いており、イスラエルはパレスチナ側はイスラエルの空爆後にイスラエル南部にロケットを発射し、ネチボット(Netivot)で男性一人が死亡し、少なくとも4人が負傷しました。なぜ、ロケット攻撃が増えたかは、今月19日に停戦期間が満了になったためです。イスラエル南部に対するロケットと迫撃砲の攻撃は、水曜日には60発以上、木曜日には80発以上が発射されました。しかし、土曜日までは死者は出ませんでした。つまり皮肉にも、イスラエルが空爆してハマスが反撃し、はじめてイスラエルに死者が出たことになります。
空爆はF-16によって行われ、ガザ地区のハンユニス(Khan Younis・kmzファイル)とラファ(Rafah・kmzファイル)にあるハマスの保安施設が標的とされました。施設は警察学校、沿岸警備隊の施設、反ハマスの人物を拘留している刑務所施設を含む保安施設です。パレスチナ高官はモスクが破壊されたと述べ、ハマスのテレビ局「アル・アクサ・テレビ(The al-Aqsa television)がある建物も破壊されました。ハマスは、かつて短距離ロケットのカッサム(Qassam・ウィキペディア)を使用していましたが、それよりも長距離のロケットを使用しているとみられています。イスラエルのイュード・バラク国防大臣(Defense Minister Ehud Barak)は、 ハマスがカッサムとグラート・ロケット(Grad rocket・ウィキペディア)、迫撃砲を使っていると主張してきました。また、記事は汚職事件で引退したオルメルト首相(イスラエル)の後継者を決める来年2月の選挙を控えたタイミングで起こったことも指摘しています。
イスラエルを擁護するわけではありませんが、空爆の事実だけが強調され、ハマスによるイスラエル攻撃が無視されすぎています。選挙の影響がないとは言えませんが、大抵の国は常に何らかの選挙を近い将来に抱えているもので、それを戦争の主原因だと決めつけると、本当の理由を見失います。1日に60〜80回の砲撃が行われている以上、どの国も何らかの対策を打とうとするものです。しかし、ハンユニスには難民センターもあり、民間人への被害を完全に排除できるような場所ではないことは明らかです。ここは過去にも紛争の場となってきました。
ハマスのロケットと迫撃砲の攻撃は看過できないものですが、ロケットは命中精度が悪く、どこかの建物を狙って攻撃するようなことはできません。迫撃砲にはそれができますが、目標を視認できる位置に着弾を観測する者を配置する必要があります。それがないのなら、大した精度は期待できません。そういう意味ではハマスの攻撃は、通常の攻撃よりは一段負荷が低いといえます。イスラエルの空爆は、爆弾の種類が今のところ分かりませんが、ハマスの攻撃よりは遙かに強力です。
気になるのは地上戦が行われるかどうかです。イスラエルはそれを否定していませんし、military.comによれば、歩兵と装甲部隊が土曜日にガザ地区の境界線へ向かっているのが確認されています。2006年にイスラエルはヒズボラのロケット攻撃を阻止しようとして地上戦を展開しました。それに類する攻撃が行われる可能性が高まっています。その展望を、私はまだ解析し切れていません。しかし、2006年と同じ状況になる可能性も十分にあると考えています。