経済悪化で、米軍に留まる者が増加

2008.12.4



 military.comによると、アメリカ経済の悪化につれて、軍に再志願する人の数が増えています。

 記事には再志願した兵士が紹介されています。ライアン・ネハス三等軍曹は14ヶ月間、危険なバグダッド市街をパトロールし、彼の小隊の5人が撃たれ、1人が死亡しました。しかし、彼は11月26日に再志願しました。軍には確実な給与の支払いと仕事があるからです。他にも数名の実例が載っていますが、いずれもあてにならない収入に頼るよりは、軍隊から得られる定期的な収入を期待していると述べています。障害を持つ子供がいる母親である隊員は、民間企業は転勤する場合、障害児を持つことを考慮してくれないと述べています。陸軍のキャリアの浅い兵士の滞留率は過去4年間で徐々に上昇し、2004年会計年度と比べると20%増加しました。海軍と空軍で、キャリアの初期・中期の隊員で見ると、今年10月の滞留率は2007年の同じ月よりも高くなっています。海兵隊の数字は明らかではありません。2007年に除隊した隊員の数は約208,000人でした。一部は末端の兵士、あるいは衛星通信やコンピュータネットワークの専門家でした。これらの内、学士号を持つ兵士は30%だけでした。

 米軍は兵士を引き留めるために、給与を増額し、入隊時や再入隊時のボーナスを与えてきました。米議会もそういう軍の要請を承認してきました。昨日紹介した、国防予算は次期政権下でも徐々に増加するという観測は、こうしたことが一因にもなっています。記事には、国防総省の請負業者に再就職する軍人の話も載っていますが、こうした業界も経済悪化の影響を受けていると、その軍人は述べています。戦争も経済活動の範囲内でしか行えないということです。現在の経済危機がイラク戦争によって引き起こされたことは、疑いの余地がありません。サブプライムローンの問題があっても、大きな戦争をしていなければ、アメリカは余裕をもって対応できたはずです。イラクの戦闘は2003年以来最低レベルに落ち込みました。アフガニスタンの戦闘は激化していますが、少なくとも一方が終息しかけていることが、再志願に拍車をかけているのかも知れません。長く軍にいれば、年金を受け取る歳になると、軍人恩給が受け取れます。自分や家族向けの医療制度も魅力的です。軍には民間企業にはない様々な恩典が用意されています。そうした将来の見返りも考えると、軍隊にいた方が得だと考える人がいても不思議ではありません。現在の戦争で、危険なのは基地外をパトロールする戦闘部隊だけで、その他の兵士は基地内での活動が中心です。彼らはそれほど危険を感じなくて済みます。もちろん、時には基地内に対する攻撃もあり、それで重い障害を抱え込んだ兵士もいます。なお、army-times.comが、陸軍と海兵隊で離婚率が上昇しているという記事を掲載しています。家族のために軍務を続けても、そのために生じる負担に耐えられなくなる家庭が多いということかも知れません。


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