海賊が豪華客船の襲撃に失敗

2008.12.5



 military.comによると、ソマリアの海賊が今度は豪華客船「MS ナティカ号(M/S Nautica)」を襲撃しましたが、攻撃は失敗に終わりました。

 全長600フィート(182.88m)、乗客約650人、乗員400人を乗せたナティカ号は約5分間、海賊の攻撃に曝されました。海賊は全長が20〜30フィートの高速モーターボートに乗っていました。船を運営するオセアニア・クルーズ社(Oceania Cruises, Inc.)によれば、8発のライフル弾が船に向けて発射されました。船は増速して攻撃を逃れました。また、乗客によると、海賊の攻撃の後で乗員が爆音を鳴らして、海賊を威嚇しました。2005年にも、海賊はソマリア沖100マイルで、シーボーン・スピリット号(Seabourn Spirit)を攻撃したことがあります。

 過去に事例があるものの、海賊が豪華客船まで攻撃したことは驚きとして受け止められていると記事は書いています。船速が早いのと、爆音による威嚇が功を奏したようですが、海賊の攻撃の仕方がかなり弱く、それほど意欲がなかったので助かったのかも知れません。客船が全力で走っても、小型のモーターボートを振り切れるわけではないからです。ただ、高額所得者を人質にできるという利点はあるものの、千人近い人質を取るのは逆に面倒ではないかと思います。当面は船の食糧で人質を養えますが、食料を食べ尽くした後の食べ物をどうするのかという問題があるからです。また、大勢の人質を取れば、世界中の関心を呼び起こしてしまい、今後の襲撃がやりにくくなる可能性もあります。

 今回の攻撃で、海賊が大胆になってきていることが分かります。海賊たちが、この先どうするつもりなのかが気になります。大した考えもなく、海賊行為を続けるのが得策と考えているとは思えません。記事には、先月ハイジャックされたイエメンの輸送船と乗組員8人が解放されたことも書かれています。この解放は地元の部族長や地域の当局者らの懇願を受け入れたもので、海賊に身代金は払っていないと発表されています。海賊たちは、この船がこの地域に商業製品を運んでいることを理由に説得されたといいます。海賊たちに関する情報は少なく、彼らの考え方を読み取るのは、なかなか難しいことです。今後、彼らが豪華客船を襲撃し、大量の人質を取るようになるのか、今回限りで終わるのか。一番重要な当事者の考えが読めないのが難点です。


Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.