特殊部隊の隊員は戦闘で最強か?

2008.2.15



 navy-times.comによると、パラシュートを使った自由降下の訓練中に海軍特殊部隊シールズのベテラン隊員、トーマス・J・ヴァレンタインが死亡しました。

 シールズなど、特殊部隊の隊員はしばしば訓練中に死亡します。1月30日には、実包を使った射撃訓練でシールズ隊員1人が死亡しています。約2週間の間に二人も訓練で死亡しているのです。特殊部隊の隊員がそれだけ猛訓練をしているのは、まぎれもない事実です。それなら、実戦では大変な数の隊員が命を落としているに違いありません。ところが、military.comによれば、2002年以降、イラクとアフガニスタンで戦闘中に死んだシールズ隊員は16人しかいません。つい先日、2人のシールズ隊員がイラクで戦闘中に死亡した記事を目にしましたが、こういう記事を目にすると実際「珍しいこと」と感じるのです。

 シールズ隊員の総数は約2,450人です。一般部隊とシールズの死亡率を比較しようとしましたが、計算に必要な信頼できる数字が見当たらず、大ざっぱな計算しかできませんでした。しかし、一般隊員よりも死亡率は若干小さいだろうと推定できます。

 先日見たドキュメンタリー番組では、アフガンでアルカイダと銃撃戦を行い、大きな損害を受けた特殊部隊の隊員は、アルカイダの方が戦術が優れていたと述べていました。これは信じがたいことです。米軍の方がアルカイダよりも数段丁寧な訓練を受けているはずです。しかし、小火器だけの戦闘では、こうした現象が起こることは、戦史を知れば自然に理解されることです。簡単に言えば、プロ中のプロがアマチュアに近い戦闘員に負け、戦場のスーパーマンを養成することはできず、戦闘をすれば損害が出るということです。また、シールズの任務は上陸支援のために障害物を破壊する場合が多く、行動を秘匿することが多いため、敵に発見されにくいという理由もあります。その結果、パトロールなどの任務が多い一般部隊の兵士の方が死亡率が高くなるわけです。先日死亡した2人のシールズ隊員も、対武装勢力の作戦中に銃撃を受けたものです。特殊部隊の隊員は「滅茶苦茶に強い」のではなく「滅茶苦茶に厳しい訓練を受けている」というべきです。戦場の冷酷さは、それを上回り、兵士の努力を無に帰させるほどの力を持っているのです。

 国際紛争が起きると「特殊部隊を送り込んで、さっさと決着をつければよいのに」という意見を耳にすることがあります。特殊部隊の戦力に依存し、浪費するような指揮官は愚か者に過ぎません。月日をかけて養成した少数の精鋭は、然るべき場所で然るべき時に使い、できるだけ死なないように配慮して、はじめて価値を生むのです。

 余談ですが、他に米軍でよく耳にする事件といえば、ウェストポイント士官学校の学生によるレイプ事件です。新聞で目にしても、「またか」と思うだけです。高い教育を受けているはずの士官候補生がなぜレイプ事件を頻発するのかは本当に謎です。


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