消防庁が地下鉄内に核シェルターを構想

2008.2.17



 消防庁が、核攻撃に備えて地下鉄の駅構内や地下街を避難所とすることを検討していることが、国内メディアで報じられました。

 私は2006年10月16日付けの記事で、核攻撃に対する対処法がないこと、防衛大臣が誤った対処法をメディアを通じて宣伝していることを批判しました。これは別に特別な意見ではなく、軍事の専門家なら百人中百人が同じことを言う話に過ぎません。土とコンクリートが最も放射線を遮断することは、誰でも知っていることです。

 私は消防庁が効果のない国民保護政策に従っている点が我慢ならず、彼らの無責任さに怒りを燃やしていました。防衛省にやる気がないのなら消防庁が主導権を取ってでも実施すべきことだと考えたのです。それがようやく一歩前進したと聞いて力が抜けました。これは本来、もっと早くに対処すべき問題でした。

 しかし、これでもまだ不足しています。地下鉄の近くだけでは意味がありません。大勢の人たちが汚染地域に取り残される恐れがあります。学校のグラウンドや公園の地下に周辺住民を避難させられるくらいでないと、核攻撃の前に国民を避難させることはできません。もし、核攻撃に確実に生き残りたいと思うなら、地方に引っ越すことです。どの国も高価なミサイルをわざわざ地方に向けて撃つことはありません。もっとも、弾道ミサイルは命中精度が低いので、確実さを狙うのなら、山間の僻地に逃げるしかないでしょう。それができないのなら、自宅に地下シェルターを作るしかありません。しかし、こうしたシェルターは特別な空気清浄機とそれを動かす発電機が必要なために高価です。だから、地方自治体が補助金を出すなどして、設置数を増やし、価格を下げる努力をする必要があります。そういうアイデアをなぜか誰も出そうとしないのです。

 日本全国に地下シェルターを作る必要はありません。核攻撃の恐れがほとんどない過疎地域なら、安価な地上シェルターで放射線を防ぐだけで足りるでしょう。家の中心部にそうしたシェルターを設ければ、多くの場合で命は助かるはずです。

 それにも関わらず、日本政府はこれまでの何の対処もしてこず、大手メディアは何も批判してこなかったのです。政府が強調してきたのは、役に立つのかが不明なミサイル防衛構想だけです。

 記事にも書かれていますが、地下鉄がそのまま完全な核シェルターになるわけではありません。換気や地下鉄が押し出す空気を地上に出すための排気口が至るところにあるため、そこから汚染された空気が流入するのです。地上よりは放射能レベルが低いと言えるだけで、長くは持ちません。

 消防庁の報告書がその通り実現するかどうかは分かりません。また、実現したとしても、それでは不十分なのです。道は遠いという気がします。


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