不安要素が多いパキスタン国政選挙

2008.2.18



 ワシントン・ポストが風雲急を告げるパキスタンの国政選挙の模様を伝えています。選挙のポイントは、野党、特にパキスタン人民党(PPP)が342議席中の3分の2を占めると、ムシャラフ大統領が弾劾を受ける恐れがあるということです。PPPはすでに半数の議席を得ることが予測されていますから、どこまで得票が伸びるかが焦点になります。

 暗殺されたプット氏に対する同情票が集まり、PPPが大躍進を遂げるのは間違いがありません。すでに、PPPの集会に対して自爆テロが行われ、130人が死傷したという報道があります。犯人の目的は分かりませんが、こうしたことは、やはりPPPに票が集まる理由になります。また、アフガニスタンとの国境のトライバル・エリアの当局は、1,122カ所すべての投票所が攻撃を受ける可能性が高いと言っています。アルカイダ系武装勢力による選挙妨害。ムシャラフ政権による票の操作が引き起こす暴動。これらがどのように起きるのかは、正確に予測できません。

 記事の中に、退役将軍で政治アナリストのタラ・マスード(Talat Masood)の発言が引用されています。「この地域の未来が決定されようとしています。イスラム国の中で民主主義が成立するのかは疑問です。核武装した国が隣国と、つまりインドと平和的に共存できるのかは疑問です」。イスラム国で民主主義が成立するかどうかは、アメリカの専門家の間でも望みが薄いと見られていることです。インドとの対立はそれほど危険視しなくても大丈夫でしょう。両国が本気で核戦争をする可能性は小さいと言われていますし、私もそれを否定する理由は特にないと思っています。問題は民主主義の実現の方です。ムシャラフ大統領は、自分がやってきた民主主義は本物だと言い続けています。これを真に受ける人は、そういないでしょう。2002年の選挙でも様々な問題が起こりました。PPPに投票したいと考えている有権者も、民主的な判断からというよりは、プット氏暗殺への報復心で票を投じるのだと考えられます。こういう環境で、民主的な国政はそう期待できません。PPPが政権を取ったとしても、腐敗する恐れは高く、そうなると軍事政権を待望する意見が増え、クーデターが起きるというのが、パキスタンの政治のパターンでした。

 もう一つ、選挙が正しく行われないことを若干暗示させる話も載っています。選挙管理委員長のカンワー・ディルシャド(Kanwar Dilshad)は、国際選挙監視団のメンバーがすでにパキスタン政府から妨害を受けているという主張を否定しました。彼は「パキスタンの人びとは、お客様に対しては常に親切で、接待するのが上手です。我々はお客様を接待し、受け入れようとします」と主張します。イスラム教徒の多くが穏やかで、お客に対して丁寧なのは間違いがありません。しかし、選挙は彼らの国の中の問題であり、外から来たお客がそれに口を差し挟むことを歓迎しないことは当然です。選挙監視団からすでに問題が提示されているのなら、公正な選挙はさほど期待できないと思えます。

 結果を見るのが恐い気がします。


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