イラク軍にM-16小銃を与えよ!

2008.2.28



 米軍はハイテク兵器の投入だけでは飽きたらず、まだまだ予算を使いたいようです。イラク軍の主力武器をAK-47からM-16へ変更しようとしていると、military.comが報じました。

 現段階で、米軍はM-16の現用型M-16A2とより小型のM-4の43,000丁をイラク軍が購入するのを援助しました。さらに、別の50,000丁が発注済みで、最終的に全イラク軍165,000人がAK-47を捨てて米製の小銃が一人に1丁行き渡ることになります。

 呆れて物が言えないというのが第一の感想です。アメリカ人には、予算を節約するという意識はないのでしょうか? M-16系への置換は、どうしても必要というわけではなく、AK-47は開発以来、高い信頼性を発揮してきた優秀な小銃です。それを新品のM-16へ置き換えるのは、アメリカの軍事産業を儲けさせるだけの効果しかありません。最近、自国内で故障が起こりやすいという議論が起きているM-16の販路が確定したのは、銃器業界にとって大きな喜びでしょう。特に、弾薬について継続的な注文が期待できます。M-16系は5.56mm NATO弾を使用しますが、AK-47は7.62x39弾です。イラク政府は嫌でも軍のために安価な7.62x39弾を捨て、より高額の5.56mm NATO弾を買い続けることになります。

 M-16系の方が数段、性能がよいというのなら置換する意味もあるでしょう。しかし、戦闘における小銃の性能は、単発式と連発式ほどの大きな違いがない限り、戦闘にさほど大きな影響を与えません。武器の性能にうるさいガンマニアならともかくも、一般の兵士は故障せず、実用的な命中精度と威力がある銃なら、何でも構わないのです。壊れにくいことではAK-47の方が優れており、連射中に機能不良が起きたり、クリーニングの難しさが指摘されているM-16を、わざわざイラク兵に与える意味はありません。ロシアなどからAK-47を調達するのが嫌だという、米軍のプライドも理由の1つかも知れません。記事には、様々な業者から小銃を購入することで、維持管理や信頼性の問題が起きていると書かれています。それは一部認めなければならないでしょうが、すべてを交換するほどの理由にはならないでしょう。必要な訓練を実施する手間の方が遙かに大きいはずです。

 果たして、イラク兵たちがM-16を受け入れるのかも気になるところです。



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