米軍人に難聴などの病気が増加

2008.3.10



 イラクとアフガニスタンで、IED攻撃を受けたり、銃撃戦を行った米軍の陸軍兵士と海兵隊員が永続的な難聴と耳鳴りに悩まされていると、military.comが報じました。戦場の騒音が生む耳の病気は以前から指摘されていたことですが、今回、改めて明らかにされました。

 ふたつの戦域に派遣された130万人の兵士の7万人近くが耳鳴りに、58,000人以上が難聴に悩まされています。待ち伏せや爆発、銃撃戦は突然、予期せずに始まるため、聴力を保護する時間がないのが問題といいます。爆発に曝された兵士の60%が永続的な難聴になり、49%が耳鳴りを患っています。さらに、兵士たちは重要な音を聞き漏らして生死を分けるのを恐れて、耳栓を使おうとしません。また、兵士は聴力の少なくとも10%を失うと難聴と認定されるため、障害手当は年に18%、11億ドルの割合で増加していると予測されています。

 耳栓にも限界があります。動いている戦車の騒音が80〜85デシベルに対して、銃撃戦の場合は183デシベルに達することがあり、こうなると耳栓では不十分なのです。600ドルもする「QuietPro」という戦闘用のイヤプロテクタはすべての騒音を聞かせながらも、銃声や爆発音などの危険な音だけをカットします。イラクとアフガンの兵士には8.50ドルの片耳用の耳栓を支給し、一部では「QuietPro」のテストを始めています。海軍は「ヒヤリング・ピル(hearing pill)」なる耳栓を研究中です。

 銃砲の世界では、射撃場で使うイヤプロテクタとして、銃声音だけを弱める製品が使われていました。これは当然、軍事分野でも重宝なものです。しかし、大勢に装備させることになると、戦費はさらにかさむことになります。

 難聴はかかったことに気がつきにくく、聴力検査で初めて分かるものです。イヤホンで音楽を聴き過ぎたりしても難聴になります。そして、一度難聴になると二度と治ることはありません。聴力の減退は、軍人にとって致命的な問題です。しかし、戦場は騒音だらけの場所で、皮肉にもこれらは解決が不可能な問題となっています。特に、IED攻撃は非常に近い場所で爆弾が爆発し、音が車内に反響して耳を直撃するという問題があります。さらに、急激な加速度で脊椎を損傷するため、騒音だけを解決すれば済む問題ではありません。

 別の記事によれば、ディック・チェイニー副大統領がかつて経営していたKBR社が供給した水で兵士の健康が害されました。飲料水以外の用途で、洗濯、入浴、ヒゲ剃り、清掃に使われる水が汚染され、イラクにある米軍の5つの基地で、セルライト、皮膚腫瘍、下痢、その他の病気にかかりました。問題が起きたのは、2004年1月、2006年12月、2004年3月〜2006年2月です。すべての水と病気の関連性は証明されていませんが、戦地での水質管理基準に達していないことは明らかになっています。KBR社は、水の取り扱いについては水質基準をクリアしていると主張しています。私の推測ですが、保存や輸送の最中に問題が起きたのかも知れません。

 水は人間の生存に不可欠ですが、汚染されやすいという問題があります。軍事においては、衛生的な水の確保は不可欠の問題です。派遣先では、基地では衛生的な水が手に入りますが、特殊部隊のように孤立して行動する部隊では水不足が起こりがちで、そうした劣悪な環境での活動を強いられることがあります。今回の事件は、基地レベルで起きた点が気になります。また、こうした水の問題だけをみても、費用のかかる方法で供給されていることに目を向けるべきです。イラクでの戦費がかさむのは、生活インフラすべてを自前で用意しなければいけないためでもあります。

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