停戦声明後もバグダッドに砲撃は続く

2008.4.1



 サドル師の声明は1週間後に戦闘を停止することを戦士たちに命じているため、シーア派武装勢力マハディ軍の攻撃は続いており、いまもバグダッドのグリーンゾーンは砲撃に曝されています。military.comは、今週末前に戦いは終わるとサドル師側が述べたと報じています。イラク政府が今週末にも戦闘が終わると述べたとCNNは報じていますが、この記事はそれに加えて、イラク政府はバスラの治安が安定するまで、作戦は続けると言っていると書いています。

 今回の戦闘でサドル師は株を上げたといえます。マリキ政権が不法に人びとを拘束しており、選挙で自身を有利にしようとして戦闘を仕掛けたと、戦いを通じて宣伝できたからです。これらの事柄が真実であるかどうかを別として、世界中に宣伝できたのは紛争の当事者としては快挙だと考えるのが、闘争の論理なのです。

 グリーンゾーンに撃ち込まれる砲弾の数はここ数日は減っているといいます。フセイン時代に用意されていた砲弾はもう在庫が尽きているはずです。今でも、しばしば迫撃砲による攻撃があるのは、新しい砲弾が密輸されているのかも知れません。もともと、損害を出すことを目標にした砲撃ではなく、マハディ軍の存在を示すための砲撃です。それでも、先週は米政府の仕事をしているアメリカ人の民間人2人が死亡しました。

 そして、問題はイラク政府がサドル師の要請を受け入れるかどうかです。米政府が受け入れの拒否をイラク政府に強く求めた場合、停戦は難しくなります。しかし、イラク政府はこのままうやむやに戦いを終わらせる方を選択するでしょう。細かい交渉が行われる余地が、まだ残っています。イラク政府としては、抑留者をすべて釈放したくないはずで、一部だけに限定するなどの交渉をやりたいと考えるはずだからです。結局、まだイラク軍が独自で治安活動を行うのは時期尚早だったということが、この事件が示唆するものであったわけです。

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