space-war.comが掲載した二回にわたる記事「Military Matters: Danger in Iraq(Part1、Part2)」(著者はウィリアム・S・リンド)は、ブッシュ政権の恐るべき、そして愚かなテロ戦争の戦略とその結果を伝えています。
ウィリアム・ファロン海軍大将が中央軍の司令官を辞任したことにより、米政府はイランを攻撃するための障害がなくなったと、リンドは書いています。イラン攻撃に反対だったファロン大将が司令官である限り、イランを攻撃する命令は出せません。さらに、ディック・チェイニー副大統領は、先の中東訪問の間に、ブッシュ政権の任期中にイランを攻撃すると訪問先で述べたといいます。リンドは、なぜ国務省を通じてそれを通告しなかったのかと疑問を提示しています。そして、それは米空軍を除き、国務省から国防長官、情報機関、陸軍、海兵隊のすべてが、イラン攻撃に反対だからです。なぜ、空軍だけが賛成するのかといえば、自分の力を誇示する機会を得られるからと説明しています。私もそれが不自然なこととは思いません。空軍は、地上部隊が求めるままに爆弾を運ぶのが普段の仕事です。だから、敵地に単独で乗り込み、重要拠点を空爆することを夢見るものなのです。こうしたことは、様々な形で過去から見られたことでした。
さらに、リンドは、アメリカがイランを攻撃した場合、イラク南部を支配するシーア派武装勢力が米軍の補給路を攻撃し、米軍が補給切れを起こし始めると想定します。そこへ悪天候により攻撃機が離陸できない状況が起こり、イランが2〜4個師団(装甲、機械化)をイラクへ送り込みます。米軍は戦力を集中させることができません。すると、米軍の戦力はアンバル州にいる海兵隊しか残らない、とリンドは書いています。
もちろん、これは想定のひとつなので、リンドにもいつ、どのように起きるかを説明することはできません。しかし、こうした想定に対する対処法を持っていることは必要だと、彼は説きます。イラクにいる部隊を失ったら、アメリカは決して敗北から立ち直れないと言うのです。
このシナリオは、イラン空爆により、イランがイラクに介入し、南部からバグダッドを狙って進撃する可能性をとりあげています。
現実になれば、イラク戦争の第二段階ということになります。リンドが言うような形にならなくても、可能性としては考えておきたくなる想定です。
私は、アメリカがイランを攻撃するのは最悪の選択と考えます。かねてから、イランが核兵器を完成させる前に、それらを攻撃すべきだという意見がありました。これは説得力のある説明がつくために、反対するのが難しいのですが、戦略として誤っています。戦争は常に、最終段階まで入念に検討し、敵を欺き、一気に勝負を決めるのが最善です。そうしたやり方に従った戦争だけが勝つチャンスをつかむのです。核施設を破壊したところでイランが屈服するわけではなく、そもそも目的がはっきりしません。民主党政権が誕生する前に、イラクを抜き差しならない状態にして、撤退できなくしたいと考えているとすれば、これはもう狂気の沙汰です。
もし、アメリカがイランを攻撃すれば、EU諸国はいよいよアメリカから距離を置こうと考えるでしょう。そして、我が日本は、それでもアメリカについていくのでしょうか。