バスラ掃討作戦の余波が終わらない

2008.4.7



 先日紹介したバスラ掃討作戦が中止された記事に、憶えておくべき事柄が書かれれています。それはイラク軍が自立して行動できないことを証明していました。

 マハディ軍を攻撃するはずのイラク軍第4歩兵師団に所属する一個歩兵大隊全員約500人と警察官400人が、武器や車両を持ってマハディ軍に寝返ったのです。今回の作戦は、イラク軍が自立して行動できることを証明するはずでした。しかし、イラク政府よりも宗教指導者の権限の方が強いということを、この作戦は証明しました。バスラにいるシーア派武装勢力はマハディ軍だけではないのに、マリキ首相は自分を支持する勢力は攻撃せず、マハディ軍だけを狙ったところも、造反を生んだ理由でしょう。マリキ首相が設定した8日の投降期限は事実上、うやむやになりました。イラク政府は、作戦を中止した一方でバスラにある武装勢力の拠点を占拠するまで取り締まりを続けると言っていますが、言葉どおりに行われるとは考えにくいところです。

 戦闘が中止されたにも関わらず、事件の余波は今でも続いています。ワシントン・ポストによれば、バグダッドのグリーンゾーンに迫撃砲やロケット砲の攻撃が行われ、米兵3名が死亡し、31名が負傷しました。ラスタミヤ(Rustamiyah)では、1名が死亡、14名が負傷しました。army-times.comは、サドルシティで新しい戦闘が起こり、イラク人22人が死亡し、50以上人が負傷しました。

 また、ワシントン・ポストは別の記事で、バスラでの事件のお陰で、マリキ首相はスンニ派アラブ人とクルド人という味方を得たと報じています。クルド人の代表マソード・バーザニ(Massoud Barzani)がマハディ軍と戦うと宣言し、スンニ派のタリク・アル・ハシェミ副大統領(Tariq al-Hashemi)がバスラでの掃討作戦に協力すると発言しました。しかし、これは内乱を増加させるだけです。

 すでに、今回の事件によって米軍や英軍の撤退に影響が出るという観測が出始めています。しかし、それよりもイラク軍を自立させるという米政府の方針がそもそも不可能だということを示しているのが問題なのだと考えるべきでしょう。アメリカにできるのは、イラク軍を自立させてから撤退するのではなく、状況に関わらずに撤退することだけです。

Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.