また、準備不足の戦争を弁護するための記事がmilitary.comに載りました。米軍が高騰する原油価格に対処するため、石炭や天然ガスから作る合成燃料の導入に向けて動き出しているという話です。
この件はすでに報道されていて、現段階では目新しい話ではありません。技術自体も1920年に開発されていたものです。
現在、従来の石油と合成燃料を半々に混合した代用石油を使った飛行テストが、B-1ステルス爆撃機などを使って行われています。最初のテスト飛行は2006年9月でした。米軍は1日に340,000バレルの石油を消費しています。これはアメリカが1日使う石油の1.5%に相当します。米軍全体の石油の費用は2006年には136億ドルでしたが、現在は25%増加しています。空軍がジェット燃料に使う費用は4年間で3倍になったとmilitary.comは書いています。
この計画には問題もあります。かつて合成燃料は本物の石油よりも50%も高価でしたが、量産効果で価格が落ちることが期待されているようです。昨年、ブッシュ大統領は、より多くの汚染物質を発散する石油は政府が購入できないという法律に署名しました。合成燃料は製造の過程で、通常の石油よりも2倍の二酸化炭素と温室効果ガスを出します。法律をクリアするための技術が必要です。飛行テストの結果は良好のようですが、こうした環境に成否が左右される可能性は十分にあります。時間がないので記事の説明はここまでにしますが、記事には他にも情報が載っているので、是非ご覧下さい。
合成燃料の技術は1920年にドイツで開発され、かつて日本も「人造石油」という名前で開発を試みたことがあります。生産量が十分ではなく、目的は達せなかったものの、国内と占領地に製造所を設けていました。石油不足が祟った太平洋戦争の記憶から、アメリカが合成燃料の研究をしていると聞くと、よけいに不安になります。古い技術だから簡単に導入できるとは言えません。現在でも一部しか利用されていないことからも、この技術が非効率的であることは説明を要しません。記事には、イラク駐留米軍が使う石油は1日当たり40,000バレルと書かれています。これは6,359.2キロリットルに相当します。日本が1年間に製造した人造石油は最高で270,000キロリットルですから、イラク駐留米軍が約42日間で消費する分を1年かけて作っていたことになります。この技術のパイオニアであったドイツは年間650万トンを製造しましたが、これでもイラク駐留米軍の半年分というところです。もちろん、当時と現在とでは技術のレベルは違います。問題は、現在進行中の戦争のために、新技術を開発しようとしても間に合わない場合がほとんどだということです。これは、将来石油に替わる代替燃料として研究を続けるべき技術であり、直ちに戦争に使えるようなものではありません。
こんな期待の持てないプロジェクトも報じるとは、行き場のないイラク戦争を擁護するために、メディアも軍に協力することがあるのだろうと思うばかりです。