元大統領報道官が暴露本を出版

2008.5.29



 military.comによると、2003〜2006年に大統領報道官を務めたスコット・マクレラン氏(Scott McClellan)が、ブッシュ政権を批判する本を出版することになりました。「What Happened: Inside the Bush White House and What's Wrong with Washington」は昨年11月に出版されることが報じられていて、予定よりも少し遅れて刊行されます。

 この本の中で、マクレラン氏は「イラク戦争は大変な戦略的誤りであった」と述べています。

 「私を含め、誰もがその影響をより完全に理解している時、今から数十年間、この戦争がどうみなされるかを知りません」「私が知っているのは、戦争は必要な時にだけ行われるべきで、イラク戦争は不必要だったということです」「大きな期待と個人的な愛情、そして彼の政権のメンバーとしての誇りを持ち、ワシントンへブッシュの後に続いたテキサスの政府支持者として、私は彼と彼の高度な外交政策のアドバイザーへイラク政策を善意に解釈する準備が十分すぎるほどできていました」「不幸にも、引き続いた出来事は、ブッシュと彼のチームを信じる我々の意志は誤っていたことを示しました」「決断する前、それらの広範な議論に参加しながら何もしないことを含め、ブッシュ大統領は常に知的なリーダー(intellectual leader)というよりは直感的なリーダー(instinctive leader)です。「むしろ、彼は彼の本能と彼の最大の信念に基づいて選択していました」「イラクについては、そんな状況でした」

 5月に行われたマクレラン氏のインタビューも記事に掲載されていますが、その中で、コンドリーザ・ライス国務長官に関するコメントが気になります。「質問を少しだけするか、前に進む前に結論を完全に検討する十分に長い時間を大統領に取らせるかで、彼女は大統領の思考に従うだけでした。」「矛盾した情報は多くは無視され、単に関心を持たれませんでした」

 ホワイトハウスはコメントを拒否しています。

 この本は予想されていたとおり、強烈な内容のようです。ブッシュ政権は不運だったのではなく、その能力によって、イラク政策を誤ったということだからです。もっとも、今となっては、こうしたことも珍しいことではなくなりました。あまりにも多くの専門家が、ブッシュ政権の問題を指摘しているからです。もはや、ブッシュ政権の信用はボロボロで、修復のしようもありません。今回出版される本は、大統領がろくな思考も経ずにイラク開戦を決意したと書かれているわけで、これまで大っぴらには言いにくかった大統領の資質に関する議論を加熱させるでしょう。これも、以前から繰り返されてきたことですが、さすがに大統領ともなると、正面切って資質を問うのは難しいのです。映画監督のマイケル・ムーアは何年も前からそう言っていますが、彼自身が特異なキャラクターで、それ故の発言とみなされてきました。ムーアは言い過ぎのために反撃も浴びました。しかし、今回は元大統領報道官の言です。そろそろ、こうした反撃は潜め、人びとも「我々はとんでもない人物を大統領に選んでしまった」と思うはずです。前の大統領選挙で、CNNだったと思いますが、誰もがブッシュの前では安心感を得られるといった評価をしていました。これは見方を変えれば、ブッシュの知性の欠如を表現していました。私はかつて「もし、ブッシュ大統領かシラク大統領(前フランス大統領)と一緒にランチを食べるとしたら、どっちがよい?」という仮定話を考えたことがあります。言うまでもなく、シラク大統領の方が話題が豊富で、楽しい昼飯になるだろうと考えました。いまでもこの考えは変わっていません。

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