military.comによれば、国防総省はイラクとアフガニスタンの陸軍と特殊作戦活動の給与の予算として、90億ドル以上を要求しました。陸軍は6月15日までに予算を使い果たす見込みです。7月には請負業者の一部が解雇されるかも知れません。
イラクをはじめとする対テロ戦争に使われる1,600億ドルの年間予算(9月までの分)は、議会における、イラク政策、新しい復員軍人援護法、その他の議論のために難航しています。上院と下院はそれぞれの法案を通過させたものの、休会する前に双方の案の和解を完了させていませんでした。
少し説明が必要です。米議会の制度では、上院と下院の議決が異なる場合、両院協議会が開かれて対立点の修正が行われてから大統領に送付され、その承認(または拒否)を受けます。しかし、そこまで審議が進んでいないため、このままでは予算が支出されない恐れがあるというのです。これは議会と大統領府の対立が深まった証拠です。緊急支出法を使うにも議会の承認が必要ですから、これは両院協議会を開催して、大統領へ予算を送るしかありません。多分、そんな話になるのではないかと想像します。
国防総省の発表によれば、57億ドルは給与支払いに使う隊員用会計、40億ドルは弾薬、スペアパーツ、装備品などの作戦・整備用会計です。追加予算が認められても、陸軍は7月中旬までにすべての予算を使い切る見込みです。
アメリカでは、こうした事件がまれに起こります。湾岸戦争でも資金が一時的に枯渇し、そこへタイミングよく日本が戦費を拠出したために、中央軍司令だったノーマン・シュワルツコフ大将が深く感謝したということは、あまり知られていません。これは彼の回顧録に書かれている話です。湾岸戦争シンドロームの日本版は、戦費の拠出が遅れたためにアメリカを中心とする国際社会から批判を受けたという奇妙なトラウマですが、これは政治家とマスコミが作り上げた「神話」なのです。