かつて現用小銃の連射機能の問題が取りざたされましたが、今度はその弾薬の問題が起きているとmilitary.comが報じました。26日に、これに関する別の記事が掲載されていましたが、陸軍がかつては無視した批判を再検証しようとしています。
それは、M16小銃やM4小銃(M16小銃の短縮版)の標準的な弾薬、M855装弾の威力が足りないという問題です。イラクやアフガニスタンでの市街における接近戦で、M855弾の威力が足りないという批判が現場から出ているのです。M855弾は針の穴のような貫通銃創を敵兵の体に作りますが、重要な器官や脊柱に当たらない限りは、アドレナリンが大量に分泌している敵兵は痛みを感じず、戦い続けようとするということです。
歩兵は一発で確実に敵が倒れるような弾を欲しがるものです。記事の中で、M14狙撃銃を使う下士官が、この銃がM4小銃やM16小銃よりも強力な弾を使う点を称賛しています。M14は口径7.62mmの装弾を、M4小銃とM16小銃は口径5.56mmの装弾を用います。口径が大きい方が弾頭の重量が重く、薬莢に入る火薬量も多いので、より大きな威力を持つことになります。
記事に紹介された実例では、ソマリアのモガディシュで、12フィートの距離から背中を打たれたソマリ人戦士は、倒れるかわりに後ろを振り返り、弾がどこから飛んできたのかを調べました。さらに、彼は何度も撃たれましたが、最初の一発目は効かなかったのです。
2006年に行われた2,600人の兵士を対象とした研究では、イラクとアフガンに派遣されているM4小銃、M16小銃を使う兵士の5分の1がより強力な装弾を欲しています。陸軍は、弾の問題ではなく照準の問題だと一蹴しています。つまり、兵士はちゃんと狙えば、敵を倒せるというのです。
最近は、大口径の弾薬を少量持つよりは、小口径の弾薬を大量に持つ方が、兵士にとっては有利であるという考え方が一般的です。しかし、戦闘でより多くの弾薬が必要になるのなら、このアドバンテージは無意味になります。
この問題で注意すべきなのは、陸軍は自分自身を象徴するような武器には執着し、なかなか入れ替えようとしないという点です。歩兵にとって小銃は象徴的な武器であり、M4小銃はいかに欠陥が指摘されようとも、米陸軍は使い続けるつもりです。記事によれば、陸軍はM855弾に関する苦情を調査し、2006年5月に結論を出しましたが、M855弾よりも優れた商業用の装弾はないと発表しました。小銃の件と対処が似ています。この調査結果については、海兵隊の退役少佐アンソニー・ミラヴィック(Anthony Milavic)が、この調査がより大きな口径の装弾を無視しいてると批判している、と記事は書いています。
記事によれば、軍医で銃創の権威、マーティン・ファックラー博士(Dr. Martin Fackler)は、問題は弾ではなく銃にあると主張します。M4小銃の銃身は14.5インチ(36.8センチ)です。博士によれば、これはM855弾が体にもっとも大きなダメージを与える速度を生むには短すぎるのです。これは銃砲に触ったことがある人ならピンと来る話です。火薬は銃身の中で完全燃焼した時に最も大きなエネルギーを弾に与えます。発砲すると銃口から炎が出ますが、実は、これは出ない方が望ましいのです。銃口から炎がほとばしっているということは、火薬が弾を押し出した後、銃身の外で燃えているということであり、当然、これは弾を押す力にはなりません。銃身が短ければ、より多くの炎が外に出るため、弾丸が銃口を飛び出す時の速度(初速)は遅くなります。その結果、弾が目標に到達した時の運動エネルギーが小さくなり、小さな傷しか作らないということになります。
M4小銃が作られたのは、機械化が進む米軍では、車両の中で邪魔にならない、全長の短い銃が必要なためです。だから、銃身を長くして解決するという話にはなりません。ハーグ条約で禁止されているダムダム弾を使わないで問題を解決する必要があります。ただし、陸軍がその気になればの話です。これまでの経緯から、その可能性は非常に低いと考えられます。