「週刊オブィエクト」というウェブサイトに、私の発言に対する反論が載っていることに、今朝になって気がつきました。JSFというハンドルで書き込んでいる方で、本名は存じません。彼が何か勘違いしているようなので、誤解を解いておきましょう。
私はJSF氏の意見だけに対して反論を書いたのではありません。それは私が書いた文章をよく読んで頂ければ分かるはずです。JSF氏が問題にしたのは、次の文章です。
ところで、クラスター爆弾禁止条約を推進したノルウェーは海岸線が上陸作戦に適さないフィヨルド地形だから、クラスター爆弾への依存度が低く、その廃絶を主張しやすいのだという意見を展開する人たちがいます。これは、第2次世界大戦でドイツ軍が上陸作戦(作戦名 ウェーゼル渡河演習)でノルウェーに侵攻したことを忘れています。こうした下手な理屈は議論を停滞させるものです。
確かに、「週刊オブィエクト」には6月4日の記事として、ノルウェーとフィヨルド地形に関する記述があります。私もこの記事を読みました。しかし、私が書いたのはこの記事に対してだけではありません。「クラスター爆弾」というキーワードで検索してみれば、この種の意見はいくつも見つかります。先に引用した西村真悟衆議院議員のサイトには「クラスター爆弾が無くなっても当面、国防上の脅威を感じない北欧やイギリス、フランスそしてイタリアなどの諸国とは我が国の位置が違う。」という記述があります。この発言はフィヨルド地形を直接指しているわけではありませんが、こうした見方が存在するという事実があり、私が引用したウィキペディアの記事にも日本の海岸線の特性に関する記述があります。あるいは、そこにはクラスター爆弾の特徴に関して「同兵器は地上軍に対し短時間で面的制圧を行えるという性質上、国境線が入り組んでいる・障壁となる地形に乏しく防御が難しいなどの事情を持つ地域では有効な手段として運用し易いことから、(以下略)」という記述も見られます。そこで、地形とクラスター爆弾の関係について、多くの人が国土の地形と関連づけて考えていると判断したので、インターネットを検索して、どのような意見があるのかを調べました。
たとえば、「艦長日記へようこそ!」には「ではノルウェーはなぜこの条約に協力的なのかというと、フィヨルドの海岸線は機雷で守るので、仮想敵であるロシアからのクラスター爆弾攻撃の方が脅威だからだと思われます。」という意見があり、それに対するコメントとして「更に言うと中心となったノルウェーはフィヨルドの地形からクラスターは使いにくい地形です。仮に機雷を廃棄しようという条約があったら、ノルウェーは参加しないでしょう。」があります。
「白砂青松のブログ」にも「平和にとって意味がありますか?この条約。更に言うと中心となったノルウェーはフィヨルドの地形からクラスターは使いにくい地形です。仮に機雷を廃棄しようという条約があったら、ノルウェーは参加しないでしょう」というコメントがあります。
他にもいくつかあったかも知れませんが、いまは思い出せません。あちこちのサイトを見ている中で、JSF氏の意見も拝見しました。しかし、彼の意見に対する反論として書いたのではありません。条約推進の中心となったノルウェーに対しては、フィヨルドについて以外でも、地勢に関する様々なな要素を理由に批判が投げかけられていました。それに対して、具体的に反論したいと考えた時、ノルウェーを象徴するフィヨルドを取り上げるのが最適と考えたのは自然な発想でした。
私の意見が複数の人たちに対するものであることは、「人たち」という表現を用いたことからも明らかです。疑問なのは、JSF氏が私の記事を読んだ時に、なぜそれが自分だけに向けられた意見だと断定できたのかです。JSF氏が主張するとおり、私が書いたこととJSF氏が書いたことはかぶる部分はあっても、若干異なっています。指摘した内容が違うのだから、自分の意見への反論だとは考えないはずです。それを私を名指しで反論しているのには、何か理由があったのだと考えざるを得ません。
ところで、JSF氏もまた私の意見を曲解しています。私は「ノルウェーは海岸線が上陸作戦に適さないフィヨルド地形だから、クラスター爆弾への依存度が低く」と書いたのであり、JSF氏が私が書いたと主張する「ノルウェーへの上陸は困難だからクラスター爆弾の依存度は低い」と書いた覚えはありません。
私は「週刊オブィエクト」は内容が参考にならないと考えているので、たまにしかアクセスしません。T-72戦車を神として崇拝すると自認する人と軍事の議論ができるとは考えないからです。
JSF氏が反論をしたいのなら、議論を確実なものにするために、まず自分の意見に対する反論かどうかを、私に確かめてからにして欲しかったと思います。こうしたトラブルを防ぐために、今後は引用元を明確にすることにしますが、JSF氏にも注意と配慮をお願いしたいものです。そうしないと意味のない泥仕合になるだけです。